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測量の日特集Interview

(一社)長崎県測量設計コンサルタンツ協会 インフラDXにおける業界の役割 「未来を創るためのはじまりの仕事」

2021年06月02日(水)

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人物

安部会長(中)、福田副会長(右)、土橋副会長(左)

国との意見交換

県内発注機関へ要望活動

災害支援活動

長崎振興局との意見交換会

土木の日イベント「オンラインクイズ大会」

高校生への出前講座

 近年、国土交通省は「インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)」を掲げ、社会資本や公共サービスを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、建設業や国交省の文化・風土、働き方の変革を推進している。本紙では6月3日の『測量の日』に伴い、(一社)長崎県測量設計コンサルタンツ協会の安部清美会長(扇精光コンサルタンツ㈱)、福田友久副会長(太洋技研㈱)、土橋了聡副会長(㈱実光測量設計)の3人に、測量業界におけるDXについて話を聞いた。


―DXではどのようなことを

 安部会長 DXとは、IT(デジタル技術)を活用して業務や組織、ビジネスモデルを変え、働き方を大きく改善しようということです。国交省が掲げるインフラ分野のDXの一つに、非接触・リモート型による遠隔操作や施工管理で業務効率化に向けた取り組みがあります。測量分野においては例えば構造物の点検などにドローンやタブレットの活用が挙げられます。また、国はインフラのデジタル化を進めており、2023年度までに小規模なものを除くすべての公共工事においてBIM/CIMを原則適用するとしています。我々、測量設計業は構造物等の3次元化という分野において、計画・調査・設計段階から関係してくることとなるでしょう。


 福田副会長 さらに国は、3D都市モデルをベースとしてまちづくりの進め方を根本から変革する「まちづくりのDX」を推進しています。現在全国56都市を対象に進んでおり、東京23区においては大手企業が3D都市モデルを整備しWebで公開しています。おそらく、その流れが地方まで来ると予想されるため、3次元化する技術を早期に習得する必要があります。


―県土木部もインフラDX促進のため一部の道路計画図を3次元化しますが、どのようなメリットが

 安部会長 これまで、平面図で見ていたものが立体的に可視化されるわけです。道路計画の際には構造物や地形、周辺の建物などを3次元化することで、関係者が直感的に理解できる利点があり、地元説明会等では大きな効果が発揮できます。国交省では道路台帳附図の電子化も始まっており、県においても現在CADデータで管理されていますが、将来的には3次元で管理していくようになると考えています。


 土橋副会長 測量設計業は、土木事業の初期の段階の作業で、工事をする方々まで扱えるように精密な図面を作っています。3次元になることで埋設物(水道管やガス管等)の位置等が一目で分かるようになり、平面図では分かりにくい勾配等も見えることで工事計画や安全対策がより進むことでしょう。


 福田副会長 そしてもう一つ。今後、ICT施工の拡大に伴い、我々には業務の3次元化の要請が増すと考えています。現状では、殆どの現場で我々が作成した2次元データをもとに施工者が3次元化作業を行っています。今後、建設工事の一層の効率化のため、測量設計段階からの3次元化が求められることになり、業務拡大が期待されます。


―協会ではどのような取り組みを

 安部会長 まずは、BIM/CIMの適用に伴う3次元データの利活用をできる人材を速やかに育成する必要があり、県内企業の技術力向上を目的に長年開催してきた技術講習会を早期に再開したいと会員からも声が上がっています。また、コロナ禍でいかに協会活動を停滞させることなく運営していくか模索する中、4月に開催した定時総会は初のリモート技術を用いて行いました。ITの活用を通じてビジネスモデルや組織の変革という意味ではDXの一端として捉えています。当協会では、リモート対応可能な機器とソフトを導入し、三密回避を前提としたオンライン講習会を計画しています。


 福田副会長 発注機関との打ち合わせ等についてもリモート技術の活用が進められています。特に、離島においては納品検査もリモートで対応していただき感謝しています。なお、そのリモート技術を活用したウェブ技術講習会を10日に予定しているところです。また、当協会では富士フイルム㈱の社会インフラ画像自動診断システムに関する支援事業に取り組んでおり、人工知能(AI)による補修方法の自動診断と当協会の技術者が判断した結果を比較検証し、最終的にはAIによる適切な判断が目標とされています。


―DX推進における測量設計業界の展望は

 土橋副会長 今後はさらに、IT・RPA等の導入により定型業務や単純作業の効率化が進むでしょう。今も体を使った作業より機械オペレーター的な作業が増えています。測量後は、パソコンにデータを取り込むだけである程度の処理を自動でしてくれます。このように、業務が改善され測量機器の扱いを理解できれば男女関係なく活躍できる業界です。近い将来は、測量してすぐに図面ができるという日がくるかもしれません。


 福田副会長 現在でも、週休二日で残業もほぼなく子育てがしやすいので女性が活躍しています。女性が目指す職業となったことが大変うれしく、これからも業務の中心となって活躍してくれることを期待しています。会員企業がDXの知識を共有し業務効率化に繋げることで、目標とする新3K(給与がいい・休暇がとれる・希望が持てる)で、魅力ある業界の姿を見せることができると考えています。


 安部会長 測量設計業は今、国や地域の「未来を創るためのはじまりの仕事」として、デジタル化の進行役を担うチャンスが到来しています。重要な役割を果たすため、会員企業の新技術への取り組みを一層強化し研鑽に努めていきたい。激甚化・広域化する自然災害に対し「国土強靭化のための5か年加速化対策」として大型予算が付きました。県では、中長期的な取り組みとして総合流域防災事業や3次元都市データによる洪水予測を連携した防災情報の構築など、デジタル化を予防保全型インフラメンテナンスに転換し、老朽化対策、国土強靭化施策を進める考えです。会員企業の重要性は高く、一歩先を見据えた行動に繋げ、地域住民・発注機関の期待に添うべく遅延なく取り組んで参ります。


(令和3年6月2日付け)


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