理路雑然 /-1-
2014年03月08日(土)
特集記事
理路雑然
大正12年9月関東大震災が起きた。多くの建物や施設が倒壊・焼失し、10万5千人が死亡・行方不明という大きな被害だった。その被害総額は当時の国家予算の7倍に上ったという。現在金額に換算すればおよそ700兆円になる。それは昭和大恐慌の引き金となったと言われる
▼目の当たりに体験した物理学者の寺田寅彦は書いている。「このような地震がおそらく数十年後には、再び東京を見舞うと考えることは合理的である。もし百年後のためを考えるなら、これくらいの地震が、3年か5年に一度ぐらいあった方がいいかもしれない。そうしたら、家屋は、みんないやでも完全な耐震耐火構造になるだろうし、危険な設備は一切影をかくすだろう。そして市民は、いつでも狼狽しないだけの訓練を持続する事が出来るだろう。そうすれば、あのくらいの地震などは、大風の吹いたくらいのものにしか当るまい」(鑢屑・抄)
▼学者らしいいささか乱暴な物言いだが、ことの本質を見抜いている。「のど元過ぎれば熱さ忘れる」と
▼東日本大震災・津波被害から数年たち、大災害を恐れ備える熱が次第に冷めつつあるのではないか。あのとき何よりも人の命、普通の生活を守ることが必要だったと肝に銘じたはずなのに。目の前のことに追われ、いつ襲ってくるか分からないものはついつい後回しになっている。しかし庶民はともかく政治や行政は忘れてはならないはずだ
▼関東大震災からすでに90年を過ぎた。