理路雑然 /-2-
2014年03月15日(土)
特集記事
理路雑然
歳をとると時間が早く進む気がする。精神科の先生に訳を訊ねた。理由は色々だが一番大きいのは大脳皮質が老化したからという。つまり頭が悪くなったからだ。例えば若い頃は一週間という間に記憶したことの量が多い。年をとると量が激減する。かつ思い出せない。記憶情報量は時間量感覚に比例する。そう言われてみれば若い頃は何曜日の昼は何を食べたとか、誰と会い、何を着ていたとか、何を話したとか思い出すことができたが、最近はさっぱりだ
▼「思い出すとは忘るるか、思い出さずや忘れねば」(閑吟集・室町時代の歌謡集)高校の時古文の教科書で読んだ。女性が男性に対して嫌味を言っている歌らしい。言葉の裏には「私は思い出したりしない、忘れてはいないのだから」という気持ちが込められている。男女の思いだけでなく、逆説表現としても、人の心理への鋭い含蓄が感じられる怖い歌だ
▼NHK復興支援ソング「花は咲く」の歌詞は、「真っ白な雪道に春風香る わたしはなつかしいあの街を思い出す 叶えたい夢もあった 変わりたい自分もいた 今はただなつかしいあの人を思い出す・・・花は花は花は咲く いつか生まれる君に 花は花は花は咲く わたしは何を残しただろう・・・」
▼辛いことは適当に忘れなければ身が持たないが、忘れてはならないことは大脳皮質にしっかり刻み込まなければ。先の先生が、思い出すことが記憶を確かにすることになるとおっしゃってました。