特集記事

理路雑然 /-12-

2014年08月02日(土)

特集記事

理路雑然

 時々引用させてもらっている寺田寅彦の文章は、もっぱら「青空文庫」からのものだ。「青空文庫」は著者の没後50年を過ぎて著作権が消滅した、明治・大正・昭和初期の文学、芸術美術、社会科学、歴史、哲学と広い分野の作品が蔵書となっている 

▼iPadやiPhone、コンピュータから簡単に見ることが出来る。その数は1万2000点を超え、何よりの魅力はタダなのです。児童文学として読んだシャーロック・ホームズシリーズやエドガー・アラン・ポーの推理小説も本物を楽しむことが出来る。夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、太宰治、吉川英治など。文学作品も充実している。筆者の好みの南方熊楠、柳田国男、折口信夫、寺田寅彦も数多くある 

▼青空文庫の宣伝をしているわけではない。環太平洋経済連携協定(TPP)では知的財産の保護強化も議題だ。新薬の特許、映画や音楽、文学などの著作権を保護する期間の延長についてだ。新興国と先進国、圧倒的に多くの著作権をもつアメリカとその他の国の利害が対立する。TPPの交渉は農作物、医療保険や工業製品、金融商品だけではない。建設に関係することも政府調達、労働などがある。全体像を理解することは難しい。成立すれば安い海外製品が流入し、再びデフレに戻ってしまう心配もある 

▼国内で著作権の保護期間が20年延長されると、「青空文庫」もこれから没後50年を迎える江戸川乱歩や三島由紀夫など有名作家作品の追加収録が危うくなるらしい。困ったことだ。


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