理路雑然 /-41-
2015年08月29日(土)
特集記事
理路雑然
強い者と弱い者が戦えば、強い者が勝つ。弱肉強食、適者生存の自然界の原理、生物進化の説明だ。ダーウィンが果たした貢献は大きい。「進化論」は生物の進化だけでなく、歴史、社会や経済の原則の正当性に使われることが多い。過去にはユダヤ人迫害など人種差別の根拠とする極端なこともあった
また市場原理として自由な競争を促することは正しく、小さな会社より大きな会社が勝つことは自然原理。大手量販店が小売り商店を駆逐する。それは原理に叶っているとする。これは危険なこじつけだ
ところが強い生物だけではなく、弱い生物も生き延びて繁栄しているのはなぜか。強い生き物が絶滅危惧種とされ、弱い生き物が繁栄している例は多い。単に戦って強いだけが継続して生存していく条件ではなさそうだ
強い者は往々にして図体がでかく大飯ぐらいで子供が少ない。弱者の方は体は小さく、食料も少なくてすみ、子供は多い。競争に強いことだけが成功の条件ではない
「棲み分け理論」と言われる進化論がある。今西錦司京大名誉教授は、カゲロウの生態学的研究で「自然淘汰によらない進化」の可能性を示した。「競争が避けられるなら棲み分ける」し「食うー喰われるも棲み分け」。活動の範囲や食料、時間などが違えばそれぞれが生存していける
単純に強弱や優劣、効率を競争で判断するのは浅はかだ。逆に多様性とか可能性を欠くことになる。世界は深く、我々が理解できるのはほんの一部なのだから。