特集記事

理路雑然 /-43-

2015年09月26日(土)

特集記事

理路雑然

 海賊と言えば冒険映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」やディズニーランドの「カリブの海賊」、ピーターパンに出てくる海賊のフック船長、百田尚樹「海賊とよばれた男」、漫画ワンピースの「赤髪海賊団」、ソマリア沖の海賊が思い浮かぶ。憎むべき殺人強奪集団なのだが、なぜか愛嬌あるキャラクターとされるのは不思議だ  

カリブ海の海賊は、何の決まりも持たないならず者集団ではなかった。現代の視点で見ると、近代に繋がる要素が見られる。封建的な時代制度の中で、貴族や商人にこき使われ、必要なくなると放り出された人々が、権力に反抗し逆に船を奪い、財宝をばらまくという富の再分配の機能を果たした。カリブ諸国の港は海賊相手の取引で大いに栄えた。ほっとけばスペイン王室に入る金銀財宝をぶん取って財政金融政策をやったことになる   

時は一七世紀前後、イギリス、スペインなど海洋諸国のいわば戦時下、国ぐるみで略奪を繰り返していた。敵国の商船を襲うことは自国の利益になる訳で、合法的海賊行為として認められ、爵位を受けた海賊もいた   

海賊の行動規範、契約による戦利品分配や意思決定の一人一票の権利、死傷者と家族への保険制度などは現在の民主主義・資本主義の先駆けと言える。民主主義はいわば法を破ることから生まれた。法とはいえ貴族や大商人の既得権益を守るものだったからだ。余りの貧富格差は海賊を生む。そんな庶民感情が愛すべき海賊のイメージとなったのかも。


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