特集記事

理路雑然 /-47-

2015年11月21日(土)

特集記事

理路雑然

 「動かない水は腐る」「流れる水は腐らない」という諺が昔からある。組織のことや人の行動をたとえた表現だ  又聞きだが、漁船で長い航海をした人が、積み込んだ飲料水の腐らないのはなぜかと疑問を持ち、のちに水の浄化装置を開発したという。波に揺られ飲料水もチャップンチャップン動くのが原因ではないかと考えたそうだ  

もう少し科学的に言うと「水が腐る」とは微生物が水の中の有機物を養分として繁殖し、塊を作った状態になったことだ。動かない水の中で微生物が養分を得て増殖する、増えた微生物がさらに増えるという繰り返しで、見た目にも色が付いたり臭いがしたりと腐った状態になる。有害かどうかは別のこと  

動く水は微生物が養分とずっと接触するのが困難になる。繁殖しても動く水のために分散され塊を作りにくい。それに水中に酸素が多く溶け込み微生物の活動を抑える状態になり、「水の腐り」が大きく妨害される。勿論程度の問題で溶け込んだ有機物が多く温度が適温だといずれは腐るし、もともと無菌や養分がなければずっと腐らない  

「動かない水は腐る」とは、かたくなな前例踏襲のことだが、うまく行けば伝統と呼ばれる  

無闇に変化が良いとは思わないが、世の中平穏無事ばかりでは面白くない。いささか不安とか不足とか対立があった方が進歩の助けになる。政治の世界も、動かすはずの「革新」思想の方が「腐った水」である独裁国家や官僚国家を作ったのも歴史の事実だ。


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