理路雑然 /-52-
2016年02月06日(土)
特集記事
理路雑然
東京五輪の大会エンブレムが、ベルギーの劇場ロゴと酷似しているとして盗作疑惑が持ち上がり結局廃案、再度の応募となった。視覚デザインを学び仕事をしていたので複雑な思いだ
デザインという言葉は様々に使われる。堅く言うと、「目的を達成するために分析・思考・概念を組み立て」「それを物・形・色など媒体に応じて機能的・効果的に表現する作業」となる
いわゆる純粋芸術と言われる分野とは異なる。作曲家は思いを旋律に変え表現する。モーツアルトなどは甘い恋の言葉を囁くより、メロディで口説く方がうまくいったのではと思う。画家や彫刻家も同様に創造力の分野
とは言えメロディや表現方法は全くゼロの状態から創作出来る余地は少ない。作る時はそう思っても、おいそれと人類がこれまで使ったことのない表現方法と異なることはない。だからこそ独自性や創造性を求める芸術家は悩む
デザインの分野は、通常目的は明らかになっているので、機能と効果とテクニックに重点が置かれる。組み合わせやバランスなどプロでさえついつい本質から離れた「見た目」に心が動かされる。正直に言うと完全な創造性の余地はほぼない
だから先のデザイナーには大いに同情する。劇場ロゴとの共通性は単に文字の形を利用したことだけ。普通よくあるアイデアだ。形や色、組み合わせとバランスで機能と新鮮さを追求した。認識不足のマスコミはあれこれやり玉に挙げるが、もともとデザインとはそういうものだ。それでも作る方は大変なのだ。