理路雑然 /-59-
2016年05月21日(土)
特集記事
理路雑然
本屋に行くと脳の活性化の本が並んでいる。「脳を鍛える○○」「ボケないための○○テスト」「脳活ドリル」など様々。クロスワードやナンプレもこの類だ
しかしそもそも「脳トレ」は効果があるのか。これまでの研究で解ったことは、考え事や複雑な計算問題でも左脳がわずかに働くだけ。右脳は働いていない。しかし簡単な計算でも速く解いているとき左右の脳の多くの場所が活発に働く。本を音読しているときの脳はスピードが速ければ速いほど活発に働く。計算を速く解くこと、声を出して文章を読むことが有効だ
ところが「脳トレ」は効果がないとの説もある。英国で1万人実験(読売新聞)の記事では、「脳トレ」自体はうまくなったが、論理的「脳の活性化」には至っていないという結果になった。つまり、「脳トレ」で脳が活性化したと思っていたことは錯覚、実際はゲームの能力が上がっただけだった。「脳トレ」は悪影響はないが、本当に活性化させたければ日常生活で脳を使う努力がいる
人と会って会話の多い人、文章を書く人、物を作る人は高齢になっても頭脳が若々しい。逆に仕事を辞め閉じこもった人の会話の反応が鈍くなるのも実感する。長く使わない言葉や名前は次第に忘れる。記憶は短期記憶と長期記憶があるが、歳を取ると短期記憶の方が弱る。そのくせ昔のことはよく覚えている
このコラムも原稿はワープロを使っている。字を書かないことは漢字を書けなくなる原因だ。執筆動機は「脳トレ」のつもりだったのに残念。