特集記事

理路雑然 /-60-

2016年06月04日(土)

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理路雑然

 工事の契約書は建設工事標準「請負」契約書となっている。そもそも請負とは何だろうか。請負という言葉は古い  

全面的な信頼を請けて任され、誠実に応えるという意味がある。だから建設だけの意味でない  

現在の建設にあたる言葉は土木が「普請」、建築を「作事」と言った。時代劇で普請奉行とか、城や石垣、壕の工事を普請するなどと出てくる。「普」は全てを意味し、「請」は保証して引きうけることを意味する。「保証する」とか「必ず守る」という意味で「請け合う」という言い方を今も使うことがある。つまり「請負」であり、普請の原義は工事の全てを請負うことである  

「普請」「請負」の歴史を調べると鎌倉時代まで遡り興味深い  

請負の意味には決めた金額と工期を守ることも含まれていた。昔の工事請負は設計変更増額などなかった。それを求めるのは請負師の恥だった。その代わり任せられた以上細かな口出しもさせないハイリスク・ハイリターンという関係だ  

現在は価格・材料・施工方法・労務費・安全など細かい制約がある。そうなると逆に注文者は変更の増額責任が生じる。つまり全面的な信頼を請けて任されていない訳で、請負という言葉が相応しくなくなった。工事施工契約か工事売買契約が妥当だ  

これも時代の流れで致し方ない。現代は厳密で正確になり、出来ればいいというわけでない。世の中悪い奴や手を抜く奴がいるしね  寂しいが請け負う側も請負という誇りがなくなってきた。我々は「請負師」だろうか「建設業」だろうか。


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