理路雑然 /-72-
2016年11月19日(土)
特集記事
理路雑然
アメリカ大統領選挙の結果が出た。大方の予想に反しとんでもない「outrageous」トランプ氏が選ばれた。マスコミによる分析はそれに任せるとして、驚いたのは勝利が確実になったすぐに政敵であるオバマ大統領が祝福の電話を送り、ホワイトハウスに招待したことだ。慣例だがその潔(いさぎよ)さは、戦いが終われば敵も味方も協力して国民のために力を尽くすという伝統だ。選挙中は醜く激しい争いだったにもかかわらず、この潔さは見習いたい
ラグビーの「ノーサイド」は試合以外では敵味方はないという思想、武士が言う「敵ながらあっぱれ」、武道の「礼に始まり礼に終わる」はその精神だ
さて我が国の政治の世界ではどうか。負けた側の潔さはない。その後の政治運営についても、国を一つにし国民のために協力していくという姿勢は感じられない。いつまでも敗北を認めず、その支持者の対立構造が続く
議論ののち意見の集約を図るのが政治の仕事。対立構造を残すのは政治家の仕事ではない。いや、実態は対立構造を残すからこそ存在できる政治家や政党が多い
世界に不気味な空気が流れている。アメリカ大統領選挙やイギリスのEU離脱国民投票、中国政府と国民、中東難民の受け入れ問題などを見ていると、エリートと大衆、富裕層と貧困層、グローパリズムとナショナリズム、人種、宗教、先進国と後進国、工業国と資源国、都市と地方の争いが激しくなっている。その対立を煽る政治が蔓延ればいつかは爆発する。我が国内事情も無縁ではない。気を付けよう。