理路雑然 /-84-
2017年05月27日(土)
特集記事
理路雑然
「労働は美徳」の考えは洋の東西を問わずあったが、少なくとも「労働時間」については変化した。法は労働時間、残業時間、超過勤務などの規制を強めている
そもそも昔の人の労働時間の感覚はどうだったのか。トマス・モアが書いた「ユートピア」(理想郷1516)には労働の時間は6時間、残りの時間は休息と教養に使うとある。人類の歴史を調べると世界も我が国もそんなもんだ。大昔の人はそれほど長く働いていなかった。しかし農業革命、産業革命を経て労働時間は延びてきた。生産を高め収入を増やすために
政府は働き方改革実現会議の決定を基に、厳格な労働基準法の適用と改正を進める。これは近年過労死への批判的世論や裁判の認定が相次いだことが背景にある
労基法は1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えると超過勤務とし、企業がそれを命じるには従業員の代表と三六(サブロク)協定を締結、労働基準監督署に届け出の必要がある。それがないと刑事罰の対象となる。また所定時間を超えた分を「時間外労働」として時間外手当を支給する必要があり、そのうち法定労働時間を超える分は割増賃金の対象となる
建設業も時間外労働の罰則付き上限規制が適用されるが、その特殊性から猶予期間を設定する。企業にとっては、作業効率(生産性)、人員増強、人件費増大、労働時間管理など課題が多い。10時間で1の仕事しか出来ない人と、1時間で10の仕事をこなす人を、同じく時間だけで評価しなければならないのは経営者の悩みだ。