特集記事

理路雑然 /-109-

2018年05月12日(土)

特集記事

理路雑然

芸術(アート)がなくても人は生活に困ることはない。感動を与えても腹が膨れはしない。つまり役に立つ物ではない。しかし芸術は、人間だけが無から創造することができる世界だ。と愚かにも思ってきた  

東京駅の丸の内南口の前に、KITTE(キッテ)という施設がある。いろいろなショップと共に、二階に東京(帝国)大学の博物館「インターメディアテク」がある。無料だ。明治10(1877)年の創学以来蓄積を重ねてきた自然史・文化史の学術標本が山ほど常設されている。現生生物だけでなく、すでに絶滅したものも見ることが出来る。鉱物や植物、世界各地の遺跡から発見された歴史的標本もある  

例えば世界各地の鳥の剥製や骨格標本群を見ると、その種類と大きさや形の多様さに驚く。進化を続けながら適応してきた姿は甘美でもある。昆虫標本や哺乳類、魚類なども気が遠くなるほど並んでいる。歴代の研究者たちが集めに集めた資料だ。博物館なので一貫性はないが、これでもかこれでもかと並ぶ展示に不思議の世界に迷い込んだ思いだ  

芸術は人間だけが作ることができるものではなかった。自然の造形は創造的で洗練され、美しく鮮やかで、進化に磨き上げられた形だ。機能美、色彩、多様さ、想像を超える姿は充分に芸術的感動を覚える。絵画や彫刻は人の感性に訴えようと磨き上げられてきたが、自然の芸術は人の創造性など比較すべきもないほど優れている。人の芸術活動は、自然の再現、後追いの様に思える。一度足を運んでいただきたい。


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