理路雑然 /-120-
2018年10月27日(土)
特集記事
理路雑然
公共工事における設計労務賃金がこの数年間上がり続けた。といっても、20年ほど前がピークで以降下落し、近年その分を徐々に回復している状況だ。調査によると実際の支払賃金にも反映されてきた。公共工事の単価は順次民間工事にも反映されていく
江戸時代の職人の賃金が「江戸の家計簿」という本に載っている。今で言う建設業の職人の中でも大工は高給取りで、現代感覚で換算すると、日給2万7000円、年収にすると800万近くにもなった。当時の所得番付には大店の店主に並び大工の棟梁が登場している
これは江戸特有の事情があり「火事と喧嘩は江戸の華」と言うように、火事があるごとに賃金が上昇した。今で言えば地震災害と東京オリンピックがちょいちょいあるようなもの。落語にも大工がよく登場するが、道具箱と身一つで所帯を支えていた。奉公人(会社員)より職人の方がうんと稼いでいた。このような職人的な人が高給を得ていた傾向は40年ほど前までは残っていたのを覚えている。学は無用、仕事はきついが稼ぎたいとその道を選ぶ人は多かった
その後高学歴社会が進み、ホワイトカラーと言われる、商業、金融・証券、管理職、公務員など「会社員」の所得が逆転した
人手不足が続いている。いつまで続くのかは分からないが、需要と供給の原則から考えれば、足りないものは値段が上がる。余れば下がる。これからは国が進める外国人活用も、慎重に考えなければならない。