特集記事

理路雑然 /-121-

2018年11月03日(土)

特集記事

理路雑然

昔の人の言葉から学ぶことは多い。明治11年、世界旅行をしていた英国人イザベラ・バードが日本に来た。そのときの紀行書・解説書の文庫本を以前読んだことがあった。東北、北海道まで回り、女性ならではの観察力が際立ち、日本の良い面、悪いところを書き残している。その中で他の国にはない治安の良さに驚き、辺地や武士、農民も共にもつ、礼儀正しさ、道徳心や優しさが一体となった国民性をむずむずするくらい賞賛している  

一方厳しい指摘は、当時は明治新政府が出来てすぐで、混乱や未整備も多かったとしても、「役人の堕落はないが無駄が多い」「一人の仕事を4人か5人でやっている」と手厳しい。特に今も通じるのは「日本の役所はどこでも、非常に大量に余計な書類を書く」と書いている。くそ真面目な国民性にあるのだろうが、想像するに、江戸期に儒学の中でも特に厳密な朱子学が道徳の基本にされ、国民の意識に染みこんでいることにあるのではないか  

公共工事において、書類の簡素化が言われながらも、なかなか思う効果が出ないのも同様かもしれない。今更そんな古くさい価値観が残っているわけはないと思うのは甘い  

役人は意識しなくても自分で仕事を増やしている。厳密さ正確さを書類の量で判断しようし、書類が多いことが仕事をしたことになるという意識が抜けない。まず意識改革が必要なのだ  

自覚はなくても江戸期朱子学はまだ我々の心の中に残っているのだから。


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