特集記事

理路雑然 /-133-

2019年05月11日(土)

特集記事

理路雑然

福島県郡山へ会議のために行った。50年ほど前、郡山にある日大工学部に入った友人を訪ねた別の友人の話。「夜、外を見ると本当に本当に真っ暗闇。見える光りは満天の星だけ。すると右の方に明かりの点が見えた。そしてだんだん大きくなってきた。音が聞こえ始め列車と分かった。正面で大きな点になり、また左の方に向かって小さくなって消え、また真っ暗闇。これってすごいと思わないか?」   

想像がつかなかった。それに住んでる若い人にとっては、吉幾三(青森だが)の「スタバもねエ、100円ショップもねエ、信号ねエ、俺らこんな村いやだ、俺らこんな村いやだ、東京さ行ぐだ。東京さ出だなら銭こ貯めて、東京でベゴ(牛)飼うだ、銀座に山買うだ」の思いだろう   

国交省の平成31年度予算の「コンパクトシティとネットワーク」の箇所を読んだ。ざっと言うと、全国津々浦々の国民が等しく享受できる環境を作る財源はない。だから地方都市に人は集約し、消費や医療介護に便利で賑いのあるコンパクトシティを作り、そのネットワークを図るということだ   

理解するし反対はしない。ただ地方の都市部はいいとして、そのほかの地域に住み続けようとする人は、切り捨てられるのかと不安をもつ。田畑、船、祖先の墓もある。利便性だけではない。生まれ育ち、心安らぐふるさとで、ずっと生きていきたいと思う人々に応えるのも政治だ   

訪れた郡山は33万の地方都市。きっと「真っ暗闇」は大げさな話だったろう。


TOP