特集記事

理路雑然 /-135-

2019年06月22日(土)

特集記事

理路雑然

随分以前、市長選挙の候補者から選挙公約の文案を頼まれた。作った公約の中で「調和」という表現を使ったのだが、それを見た候補者は「調和」は票にならないから削って欲しいと言った。「成長」「進歩」「発展」でなければ票は集まらないと  

果たしてそうか。全国でもワースト2位の人口減少率。人口が減少し経済も停滞する中で、「成長」「発展」をうたい、期待を票につなげたい思いは理解できる。しかしそれだけが道ではないだろう  

突然だが、東日本大震災津波のあと、家族や友人、家や町も失った人の言葉を思い出した。退屈で当たり前と思っていた普通の生活がどれほど幸せだったのか、失ってみて初めて分かった。もとのあの日に戻りたいと  

我々は今より明日が良くなることを望む。企業の目的も成長し発展する事だ。それが幸せへの道と考える。それは当然だ。しかしそれだけでは大切なものを見失う。もしかしたら、変わらないことのなかに人の幸せがあるのかもしれない。個人も会社もこれまでのように生き、争わず、経営していければいいと考える人も多い。いやその方が多い  

「調和」にはそんな意味があったのだが、選挙には不向きかも。全てが変わっていくとしても、ゆっくりと「調和」しながら進歩して欲しいと願うのは無理なのだろうか。世界中が競い合い度が過ぎれば、人の心は荒び、いずれ全てが不幸になると確信している。今を守る「調和」は実は民意のトレンドなのだ。


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