特集記事

理路雑然 /-148-

2020年01月11日(土)

特集記事

理路雑然

道を間違ってしまった。次の世には建設業の受注者ではなく発注者になりたい  

イラストレーターの和田誠さんが亡くなった。和田さんは週刊文春の表紙を長く描かれていたのでご存じの方も多いだろう。平野レミさんの夫でもあった  

その追悼文にあった話。生まれ変わったら何になりたいか?ある文芸誌の質問に和田さんはこう答えた。「オレの子供。だって、オレが可愛がるから」。ちょっと頭が混乱するが人柄が偲ばれる  

この話を読んだとき別の話を思い出した。民俗学者柳田國男の「先祖の話」という本のくだり、訪れた調査先で聞いた老人の言葉だ。「いいご先祖になるつもりだ」。ドキッとするようなセリフだが、考えてみると奥深い。いいご先祖、いい子孫になりたいと皆が思えばいい世の中になるだろう  

判断に迷ったとき、親父はどう思っただろうか、先輩はどう考えただろうかとふと頭に浮かぶ。「それでいいのか、お前」「後ろ指指される様なことするな」と声が聞こえる。誰もが経験することだ。彼らは亡くなっても生き続ける。先祖の役割は続く  

当たり前だが、人は狭い了見でしか物事を判断できない。それなのに自分の思い、目の前の損得、意見の多数だけが絶対と決めつけるのは思い上がりだ。もっと謙虚さがいる  

道を間違ってしまった。次の世には発注者になりたい。いや誤解なきよう。生まれ変わって、受注者が生き生きと仕事ができるようにしたい。そんな発注者になりたい。できれば「いいご先祖になりたい」…無理かな。


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