理路雑然 /-155-
2020年04月18日(土)
特集記事
理路雑然
「骸骨を乞う(がいこつをこう)」という言葉を初めて見たときはギョッとした。その意味は辞職を願い出ることだが、なぜそのような意味なのか? 日本では江戸時代、武家の間でよく使われた。出所は、中国の春秋戦国時代の斉の宰相(総理大臣)晏嬰の言行をまとめた『晏子春秋』(あんししゅんじゅう)に出てくる言葉。「骸骨」とは、自分の骨のことで、主君である斉公に執政を批判された晏嬰が、頭にきて「これまで臣下として身を捧げて働いてきたが、老いて骸骨同然になってしまった。その骸骨同然の身だけでも返していただきたい」といって、辞職を願い出たという故事による。すごい啖呵だが、聞いた斉公がどうしたかは知らない 映画やドラマの中で「骨は拾ってやる」というセリフがある。命をなくすような危険なことでも、我が身を捨てて実行するとき、他の人がその身をおもんばかって言う言葉だ。あまりいい例ではないが、ヤクザ映画では鉄砲玉(実行犯)の激励にも使われる。家族の世話は残った俺が見るからと
思い浮かぶのは、福島の原発処理や中東の戦闘地区に派遣される自衛隊、コロナウイルスの治療に当たる人たちのことだ。面倒なことや嫌なこと、危険なことは行政や他人任せ、不満や批判ばかりの世間の陰には、使命感をもって役割を果たす人々がいる。感謝しよう 「肉を切らせて骨を断つ」「骨身にしみる」「粉骨砕身」など骨を使う言葉は生々しく興味深いものが多い。いつか「気骨」のある人と言われてみたいものだ。