理路雑然 /-169-
2020年12月05日(土)
特集記事
理路雑然
あの人とはソリが合わないなどと言う。ソリとは反りのこと。日本刀は西洋の直刀と違い反っている。刀と鞘(さや)の曲線が会わないと抜き差しが難しい
近年「刀剣女子」が増えているとテレビで見た。オンラインゲームやアニメのせいだとか。名刀の鑑賞会に押し寄せ、芸術的に優れ、由来、歴史も興味深いその美に魅入っている
今だから言えるが、実は高校の頃まで日本刀を持っていた。幼い頃から育ててくれた伯父さんがくれた一振りだ。刀を持つ心得と、手入れ方法を厳しく教えられた。チャンバラ遊びに持ち出すことも人に見せることもなかった
伯父さんは書画骨董が好きで、特に日本刀は鑑定を頼まれる程だった。成人してから久しぶりに刀を抜こうとしたが、錆のせいか鞘から抜くことができなかった
刀は重い。普通1㎏以上ある。時代劇にあるように片手でバッタバッタと斬りまくる太刀さばきなどできない。あれは竹光かジュラルミン製。本物は握力も必要だし、素振りでもすぐに腕が萎える。そういえば高校時代の友人は剣道部だったが、前腕が太かった。竹刀は刀の半分以下の重さ。それでも筋肉がつくのだから、日頃の鍛錬は如何ばかりか
刀剣女子がうっとりする名刀は刃こぼれはない。実戦では使われなかったからだ
滝沢馬琴の南総里見八犬伝に登場する架空の名刀「村雨」(むらさめ)は、鞘から抜くと刀身に露が浮かび、人を斬れば村雨(通り雨)のごとく水が滴り、刃に血糊が付くことはなかった。「抜けば玉散る氷の刃」の名セリフ。