特集記事

理路雑然 /-175-

2021年03月27日(土)

特集記事

理路雑然

不思議な能力を持つ人を知っている。なぜそこまでわかるのかと不気味なほどだ。話をすると、ことのなり行きをすぐに理解し、登場人物の本心を見抜く。彼は将来起きることも予見し当ててきた  

しかし全てを見通せることは必ずしも幸せではないし辛さもある。我々凡人はその予知能力を活かし株価や競馬の予想で大儲けできるのになどと思ってしまうが、彼はそんな欲はない。こちらの体調などスバリ言い当てる。超能力と言うより直感力だろうか。きっと観察力が尋常ではないのだ  

シャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロやドラマ「相棒」の特命係、杉下右京も観察力が並外れている。会った人の持ち物、顔の日焼け、靴の汚れから、職業、出身地、趣味などを見抜き事件を解決する。流行のビッグデータ、AI(人工知能)解析みたいなものだ  

事件解決には結構だが我々は知られたくないこともある。町中に監視カメラが取り付けられ、AIが道行く人を全て分析し監理する社会は、犯罪防止にはいいが嫌なもんだ。誰かに取り締まられている世の中はまっぴらごめんだ。ところがいつの世も政治や行政、大きな組織は、個人を分析し制御できると勘違いしがちだ。やり過ぎは好ましくない  

一方我々も、「自分は完全に自由に判断している」と思うのは勘違いらしい。最新科学によれば多くは必然の範疇にある。どちらにしても、AI分析と予想に反抗し裏切るような、例えばアンケートにはいつも嘘を書くなど、自由の権利を行使する意地悪くらいは持ちたいものだ。


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