【特別企画】Special interview行政トップインタビュー /九州地方整備局長崎港湾・空港整備事務所 熊野哲也所長 /地元建設業 必要不可欠な「パートナー」
2020年08月21日(金)
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今年4月、松が枝地区国際旅客埠頭の2バース化という大きな事業が新規事業化された。陸路とともに港湾と空港は長崎にとって重要な人流・物流拠点。それらの整備を担う九州地方整備局長崎港湾・空港整備事務所熊野哲也所長に、同事務所の事業内容と思いを聞いた。
松が枝2バース 21年度の着工目指し
まず、松が枝地区国際旅客埠頭の2バース化事業については、地元の方々の思いが形になる大きな一歩となりました。同事業では、直轄で長さ410㍍・水深12㍍の「第2バース」および水深12㍍・1・3㌶の泊地、長崎県が2・7㌶のふ頭用地および臨港道路270㍍を整備(※1)します。本年度は着工に向け、埋立承認への手続きや岸壁設計(※2)、施工方法の検討、他の船舶に影響しないよう航行安全検討などを行っています。予算をはじめとした状況が整えば現段階では来年度の着工を目指しています。
現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響が広がっていますが、公共事業は完成までに長い期間を要します。この事業も2025年度までを事業期間としており、事業進捗を担う機関としても「目の前」だけを見るのではなく、長期を見据え、今できることを着実に行っていきたいと考えています。
そして本年度は、厳原港離島ターミナル事業が慨成する大きな節目の年となります。物流・人流が混在、老朽化も進んでいたことから、物流・人流機能を分離し、耐震強化岸壁を整備、ターミナルを再編する事業で、03年度に着工したものです。現在、人流ゾーンにおいて、国際・国内航路を入替え利便性を向上させるため、フェリーの着岸に支障となる既設防波堤の撤去を行っており、年度内に完了。対馬市が事業主体となっているターミナルビル整備も同じく完成することから、地元の方々の利便性向上と物流・人流活性化につながるものと思っています。
佐世保港では前畑地区で予防保全事業を行っています。主として老朽化した桟橋式部分(延長84㍍)の床版および杭を撤去し、新たに設置するもの。本年度は残りの床版撤去および新しく杭打設を行います。全体で2列の杭打設と3列の床版設置のうち、1列の杭打設と床版設置を本年度から21年夏にかけて実施、その後残りの杭打設および床版工を実施したいと考えています。
ほか、蟐蛾の瀬戸航路(壱岐・郷ノ浦港南西部)の蟐蛾島において本年度、消波ブロックによるのり面保護対策に着手しました。これまではコンクリートマット覆設により、法面保護を行ってきましたが、以前にも損傷が発生したため、今回、抜本的に対策工法を変更して実施するものです。現在はブロック製作を行っており、全体で90㍍のうち、25㍍分を今年度内に設置を開始します。残りの延長に関しては21年度に実施する見通しです。
長崎空港滑走路 50㍍の拡張実施
空港関連では、航空機のオーバーラン等の際に人命を守り、機体の損傷を最小限とする「滑走路端安全区域(RESA)」について、国際基準に則り13年、国内設置基準が改正されました。伴って長崎空港でも拡張が必要となります。長崎空港では50㍍ほど拡張の必要があり、約1・8㌶を埋め立てます。基本設計を完了したところで、現在は環境調査や施工方法の検討を実施。これを踏まえ、来年度に埋め立て申請を行い22年度の着工を目指します。 また同空港では、護岸の一部が20~30㌢㍍沈下している箇所が点在していることから、天端のかさ上げ(コンクリートの増し打ち)を本年度実施します。ほか、エプロン改良や誘導路改良(舗装工)も引き続き実施していきます。
これからの事業
長崎でのこれからの事業としては大きく2つの視点が重要だと思っています。一つは観光による交流人口の拡大。赴任から1年を過ごし、長崎は非常に素晴らしい地だと思っています。観光地として充実しているだけでなく、魚を中心とした食も美味しい。多くの観光資源と歴史、食文化がありとても魅力的なまちです。たくさんの人が訪れやすいと感じられるよう、クルーズ船受け入れ拡大へ向けた整備や長崎空港での安全・防災整備など、整備面で貢献できたら、と思っています。
もう一つは離島の港湾整備。長崎は全国で最も離島が多い県です。離島ではもちろん港湾が必要不可欠。離島の産業や暮らしを支えるそれらの港湾整備をしっかり行えるよう、特に防災対策に力を入れて実施していければと考えています。 現場を支える 建設業 事業についてお話しましたが、現場で工事を進めるのは建設業の皆さんです。災害対応も我々だけでできるものではありません。必要不可欠なパートナーだと思っています。ですから、建設業の皆さんからいろいろなご意見を伺いつつ、要望があれば真摯に対応し、共に地域の発展を目指してより良い関係を構築したい。それがこれからの港湾整備に生かせればと考えています。
建設業の方々からは作業船の維持に関する問題についても伺っています。これについては我々も重要な問題だと認識しています。いざという時の災害対応も、地元の作業船が無くては復旧もままなりません。作業船の維持更新のためには一定量の仕事と見通しが必要です。松が枝2バース化事業をはじめ、発注する工事は出来るだけロットを分けて地元企業の受注機会を増やしていきたいと考えています。