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【行政トップインタビュー】新たな事業展望を描く時期/九州地方整備局長崎港湾・空港整備事務所大庭靖貴所長

2021年08月18日(水)

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人物

大庭靖貴所長

佐世保港(前畑地区)予防保全事業の概要

 「地域とのかかわりはこれから。事業を粛々と進めていくことが今、出来ることであり、成すべきことだと思っています」と語る大庭靖貴長崎港湾・空港整備事務所長。今年4月に着任した大庭所長に、主たる事業の展望と思いを聞いた。


松が枝2バース化・年度内に初弾発注

 2020年度に事業化した『長崎港松が枝地区旅客船ターミナル整備事業』は、やはり本年度の主たる事業として最も大きなものです。大型クルーズ船に対応した港湾施設整備を行う本事業は、直轄で整備する岸壁は延長410㍍、水深12㍍。泊地は岸壁前面部で水深12㍍を確保するために1・3㌶の浚渫を行います。

 岸壁整備の内容としては、埋立前面部320㍍はケーソン式で17函、突堤部と接続するケーソンのエプロン部端に1函の計18函を計画。突堤部90㍍の構造は検討中で、エプロン幅(ケーソン式の部分)は20㍍となります。本年度は、埋立申請ができ次第、年度内を目途にケーソン4函の製作を公告、次年度以降、残りのケーソンを製作予定です。

 現地へのケーソン据付や浚渫は立地企業等の海面利用者の移転後、現時点では23年度からの着手を目標にしています。

 長崎は1958年にクルーズ船が初寄港して以来、ほぼ毎年クルーズ船が訪れています。これまで石油危機やSARSなど様々な危機がありましたが、それでも長崎への寄港が途絶えることはありませんでした。その背景には豊かな自然や歴史文化、豊富な観光地といった長崎の魅力が色あせず在り続けているということが大きい。このコロナ禍も、落ち着けばまた多くの観光客が訪れることと思います。寄港が減少しているこの時を工事進捗のチャンスと捉え、整備を進めることで、来たるべき賑わいの時に備えたいと考えています。


継続事業も着々

 『佐世保港(前畑地区)予防保全事業』では、老朽化により利用制限が掛けられていた10㍍岸壁の桟橋式84㍍部分について、年度内の完成を目指しています(東洋建設、大坪建設、りんかい日産建設施工)。

 来年度には取付部(図①②、水深が違うものの、一括発注予定)の撤去・更新および舗装を行い、これをもって本事業は完了となります。また、本事業区間に隣接する11㍍岸壁(延長195㍍)の老朽化対策(改良)は、来年度に設計を行う見通し。23年度には着工出来たらと考えています。

 また、20年度補正において事業化した『厳原港(厳原地区)防波堤(北)予防保全事業』では、対象の防波堤が築造から22年経過、堤頭部から堤幹部(防波堤延長270㍍のうち直轄事業区間は195㍍)にかけて消波ブロックが飛散・沈下し、波が直接堤体にぶつかっている現状です。このため、まず港内側の腹付工としてカウンターウエイトを置き(大坪建設施工)、大型化した消波ブロックを設置します。近年の被災状況をふまえて全国的に設計波の見直しを行っており、厳原港においても設置当時から波が大型化していることから、ブロック見直しに至りました。秋ごろまでに規格検討を行い、年度内に製作発注を行いたいと思います。現地での据付は22年度以降になります。

 ほか、空港関連では『滑走路端安全区域(RESA)』確保に向け、本年度に埋立申請(1・9㌶)とあわせて設計(中電技術コンサルタントが担当)を行い、来年度から埋立護岸の整備を行っていく予定です。


新たな港の役割

 長崎は出島が鎖国時代に全国唯一の貿易港となり、明治維新後には全国の9割を取扱う石炭産業、今も長崎を支える造船業、クルーズ船寄港と、歴史的に役割と形を変えながら発展してきたまちです。今はまた先を見据え、次の役割を考えるタイミングなのかもしれません。松が枝地区旅客船ターミナル整備といった現在の事業をしっかり進めていくと同時に、港の役割としても次の展開を考え、新たな事業展望を描いていく時期なのだと思います。洋上風力発電や潮力発電なども海洋県として取り入れ、それらの支援が行える港の在り方を検討するのもその方向性の一つかと思います。政府としても「カーボンニュートラルポート(CNP)」を進めていますので、タイミングとしてはとても良いのではないでしょうか。


共に「次の長崎」を造るパートナー

 地元港湾建設業の皆さんには、パートナーとして重要な役割を担って頂いていると思っています。災害対応をはじめ、現場あっての我々の仕事です。コロナ禍により関係性が希薄になりがちですが、ワクチン接種も進み、光が見えてきました。遠くないコロナ「後」の世界の中でしっかりと関係を構築し、共に「次の長崎」をつくっていきたいと思っています。

大庭靖貴所長(おおば・やすたか
1985年生まれ、静岡県出身。2008年東京工業大学工学部土木工学科卒業、10年東京工業大学大学院理工学研究科土木工学専攻修了。11年、九州地方整備局港湾空港部港湾物流企画室に勤務、九州へは2度目の赴任となった。趣味はテニスや旅行。着任が決まり、水産県長崎の食にも期待したが、コロナ禍による自粛のまま4カ月。「これからの機会を楽しみにしています」と笑顔を見せた。









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