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〝匠の技〟を後世へつなぐ/人材の確保・育成が喫緊の課題

2020年01月01日(水)

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地域貢献

クローズアップ

県技能士大会前に行われた記念撮影

技能まつり(長崎技能士会と長崎県建設産業労働組合)

技能まつり(長崎県板金工業組合)〕

 少子高齢化や技術革新の進展など、日本の産業を取り巻く環境が大きく変化する中、産業界にとって若い人材をいかに育成していくかが喫緊の課題だ。ものづくりの素晴らしさを後世へ―。ものづくり分野などの人材確保・育成、技能継承や技能振興に力を入れる県の施策をはじめ、長崎県職業能力開発協会(町田十九一会長)と長崎県技能士会連合会(山口正美会長)が取り組む長崎県技能士大会や匠の技を披露する技の祭典『技能まつり』についてまとめた。

技術や技能は日本の宝労働者の処遇面改善を


 次世代への技術・技能の伝承が極めて大きな課題であるということは、業界関係者すべての認識事項だ。『技術や技能は日本の宝』。とりわけ、専門工事業業界への入職状況は、依然として厳しい状況が続いている。若者の入職促進や人材育成が喫緊の課題だが、少子高齢化や若者の県外流出が続く中、即座に解決できるという簡単なことではない。このためにも、官民が一体となり課題解決に向け、真剣に取り組む必要がある。


 将来的には生産年齢人口の減少に伴い、更に就業者の減少が進むことが推測される。このままでは、労働力不足をはじめ、さまざまな悪影響を及ぼすことが考えられる。技能の継承と振興、労働者の技能を向上させ、本県産業の基盤を確かなものとするため、まずは技能労働者の処遇面を含めた社会的評価の向上を図るとともに、若年者が進んで技能者を目指す環境を整備するなど、技能を振興し技能を尊重する機運を醸成することが重要だ。


 県は、本県産業を支える人材育成などを目標とした『第10次職業能力開発計画』を策定。県はこの中で、ものづくりや技能の普及啓発推進 若年者のものづくり離れ、技能離れが憂慮される中、優れた技能の維持・継承が問題と指摘。長崎県職業能力開発協会など関係機関と連携した取組を強化する必要があるとしている。 


ものづくりの魅力発信技能を尊重する機運を


 また、技能五輪全国大会など各種技能競技大会への選手派遣の支援のほか、長崎県技能士大会において各種表彰を行うなど、技能の振興や技能労働者の地位の向上に取り組んでいく構え。さらに、児童・生徒や保護者に対しては、職業能力開発機関や業界団体、教育機関等関係機関との連携により、「ものづくり体験教室」や「技能まつり」など優れた技能士とのふれあいを通して、ものづくりの「おもしろさ、楽しさ、大切さ」を感じてもらうよう力を入れる。技能の魅力や重要性の啓発を行い、技能が尊重される社会づくりを進めることとしている。

産業人材の育成目指す技能士大会などを開催


 これに関連して、「人材開発促進月間」の行事の一環として毎年11月、県と県職業能力開発協会、県技能士会連合会主催のもと、「長崎県技能士大会」が開催された。1971(昭和46)年第1回が開かれ、今回で48回目を数える。知事表彰や県職業能力開発協会長表彰のほか、技能の継承や後進の指導に特に熱心であったことを評価する長崎マイスター認定書授与があり、卓越した技を高く評価。このほか褒章受章者などの紹介も行われた。


 主催者挨拶で県産業労働部の村田誠次長が中村法道知事の挨拶を代読。この中で村田次長は「技術・技能をいかに後世に引き継いでいくかが大きな課題。今後も関係団体と連携し、技能・技術が評価されるよう取り組むとともに、産業人材の育成に力を入れる」などと挨拶。技能検定合格者に対しても、今後の活躍に期待を寄せた。


 長崎県職業能力開発協会の代表を務める町田十九一会長は挨拶の中で「より高度で質の高い専門的知識を有する技能士が強く求められている。技能の継承が急務。技能士の社会的地位の向上を高めていきたい」と抱負。来賓として訪れた長崎県議会の瀬川光之議長らも、ものづくりの重要性を強調。卓越した技の継承が大事だとの考えを伝え、技能士の今後の活躍に大きな期待を寄せた。


 本年度は、㈲宮本造園の宮本秀利氏が黄綬褒章を受章し、長崎県技能士大会で披露。建設関係では、㈲林田鉄筋工業の林田秀幸氏が鉄筋施工として、県知事表彰(技能検定功労者)を射止めた。このほか、長崎板金工業協同組合に所属する永田正伸氏が建築板金として、長崎県職業能力開発協会長表彰(技能検定功労者)を受賞。また、中央職業能力開発協会長表彰においては、西日本開発㈱の村川武敏氏が受賞した。


 長崎県技能士大会に先立ち、長崎県職業能力開発協会(町田十九一会長)は、匠の技や先端技術を披露する長崎県の技の祭典『技能まつり』を開催。全17団体が協力。16ブースが出展し技術・技能の素晴らしさや重要性をアピール。長崎技能士会(建設長崎)や長崎県板金工業組合などが〝匠の技〟を披露した。


 後援・協力は長崎県技能士会連合会。後援は県、県教委、長崎市など。若者のものづくり離れが進む中、技能継承や後継者の育成を図るとともに、ものづくりの魅力を伝えるのが狙いだ。


 オープニングセレモニーで長崎県職業能力開発協会の町田会長は、技能の素晴らしさや重要性を再認識してほしいとの考えを強調。『ものづくり』は生活や産業基盤を支えている重要なものという認識を示した上で、技能や技術を伝承していく必要があるとした。建設新聞社の取材に対し「技の伝承が目的。子どもさんが参加するのはすばらしいこと。親子で一緒になって見てもらい、ものづくりの楽しさを知ってほしい」と話し、イベントの成功に期待を寄せた。


 また、長崎技能士会の北村政和会長と長崎県建設産業労働組合の田上一郎執行委員長もイベントに参加。建設新聞社の取材に応じた両氏はともに、「ものづくりの楽しさを子ども達に知ってもらう機会になれば良い。こういった取り組みが若年技能者の育成につながれば幸い」との考えを示した上で、「将来、大工の仕事に就いていただきたい。そのようになればうれしい」と本音を語った。毎年好評となっている万能腰掛けを企画。体験では匠の丁寧な指導のもと、子ども達が真剣な表情で作業に取り組んだ。


 長崎県板金工業組合は、銅板のたたき出し体験を企画。匠たちのアドバイスを聞きながら、ものづくりの楽しさを満喫。多くの子どもが参加し、人気のコーナーとなった。


 技能士を取り巻く環境は、高齢化や後継者不足などにより大変厳しい状況だが、長年培った技術を今こそ大いに発揮していくことが大事。技能士の社会的地位の向上を高めていくためにも、このような取り組みはこれから先も重要だ。


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