理路雑然―184―
2021年09月18日(土)
特集記事
理路雑然
コラムを書くコツはと聞かれるが、多分「書き始める」ことにある▼文章は頭の中に前もってあり、文字に書き写す作業ではない。書き始めると途中で不思議に関連することやアイデアが浮かび肉付けされる。ワープロはその点便利な道具だ。付け加えるのも消すも自由自在。書き進めると、始めの思惑と逆の結論に至ることもあり面白い▼思いつきをメモする癖があるが、話が分散し収拾付かなくなったものが多い。後から読み返しても汚い字なので、自分で読めないことも▼文章ばかりでなく人の話も似ている。すでに確かな考えがあって伝えているというより、話しながら筋道を立てていることが多い。また会話だと相手の言葉に触発され考えが広がる▼原稿を読むような広報官や政治家の話は聞く人の心を掴まない。抽象的な言葉を次々と連ね、意味不明の横文字を使う人は警戒した方がいい。難しい言葉の羅列を避け、分かりやすく、たとえ話のできる人は、内容を本当に理解しているのだろう▼芸術と言われる分野は創造力が大切といわれる。描き始め、作り始めてから、ああでもないこうでもないとひらめきに変化させながら完成させる。目と耳と手が作品を創り出す。前もってすべてがあったのではない▼先ずは書き始める、描き始めることがコツだ。とは分かっていてもそれが難しい。気持ちが乗るときとそうでないときがある。それに言葉が飛び交うときと失語症になるときがある。経験的には、夜布団に入ってからの1時間、朝9時までの2時間が文章を書くにはいいと思っている。