特集記事

理路雑然―179―

2021年05月29日(土)

特集記事

理路雑然

 「世界の日本人ジョーク」は各国の国民性を浮き彫りにする。ざっとこんな風だ▼新型コロナ感染防止のため、各国政府が国民にマスクの使用を求めた。アメリカでは「マスクをすればあなたは英雄だ」。イギリスでは「マスク姿は紳士的だ」。ドイツでは「マスクをするのがルールです」。フランスでは「マスク姿は最新ファッション」。イタリア政府は「マスクをすると異性にモテます」。ロシア政府は「ウォッカを飲まないときはマスクを」。中国政府は「マスクをしなければ拘束する」。そして日本政府は「みんなマスクしてますよ」となる▼国民性の違いをユーモアにしているだけで人種差別ではない。それに実際の姿かどうかも怪しい▼日本人の行動の特徴とされる「みんな」がジョークの味噌だ。たしかに回りに目を配り同調する傾向は社会全般にある。世間体とも言える。しかし他国は違うことは知っていた方がいい。「みんな」や国際協調は通用しない▼「みんな」揃うとは言っても、一党独裁の強制的な世論統制とは違う。島国で小さな集落が争うことを避けてきた、長い歴史が作り上げた知恵だ▼政治の世界ではよく裏付けもなく「みんな」「国民」という言葉を引き合いに出す。それほど「みんな」「国民」を後ろ盾にしなければ正当性を主張できないのが日本人だろう。逆に、多数の意見に反しても、私はこう思うと言う方が分かりやすいが、それはないのはさみしい。いやいや目に見えない「みんな」に逆らうのは相当難しいからね。


TOP