特集記事

理路雑然―180―

2021年06月12日(土)

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理路雑然

 机の引き出しから、「平成18年の大型倒産(5億円以上)」という切り抜きが出てきた。15年前のものだ。記載された25件の内、建設業と関連企業の倒産、民事再生は15件を占める。その頃建設業界は公共事業が削減され続け、極寒の季節だった。経営者はノイローゼ、夜逃げ、自殺者もいた。従業員は給与カット、人員整理におびえた。銀行は貸し渋り、引き剥がしと惨めで思い出したくない時代だ▼現在、新型コロナ感染対策の大型国家予算が組まれている。予算は医療だけでなく景気対策にも使われる。雇用調整助成金、持続化給付金、地方創生特別交付金、離職者雇用促進助成金など多岐にわたる。以前は経営難を国が助けるのは大手企業や金融機関だけだったが、今回は中小零細企業や店舗、失職者にも助成される。十分ではないが過去にはなかったことだ。感染終息まで生き延びてほしいものだ▼比べる訳ではないが、建設業界が痩せ細ったときにこんな手厚い計らいはなかった。あったのは新分野への転業や事業の多角化の学習支援だけ。そしてそのチャレンジの大部分は失敗した。どの分野にもずっと前からやってきた先駆者がいるわけでかなうわけはない。結局需給バランス調整の方針が強まり、企業数を減らす方向に進んだ。建設産業全滅を避けるにはほかに方法はなかった。そのなごりが一般競争入札、総合評価落札方式などだ▼新型コロナ対策の国家予算も不思議な話で、国債を発行すれば現金に化け、数百兆円の予算が組めた。建設業を苦しめた財政健全化のための公共事業削減とは何だったのだろうか


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