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【特別対談】五島振興局・村山弘司局長×県建設業協会五島支部・戸田博之支部長 /「地域に生きる建設業」の活動を官民連携して発信

2019年10月19日(土)

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人物

ガッチリと握手を交わす村山局長と戸田支部長

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戸田支部長

村山局長

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 ―去る7月20日、警戒レベルのうち最も高い“レベル5”にあたる大雨特別警報が五島市に発令された。この豪雨災害による膨大な土砂崩落により、通行止めとなる道路が上五島・下五島地域で多発。この有事に対し迅速に対応し、かつ、いの一番に復旧にあたったのは地域に生きる建設業者たちだった。


 10月1日には、五島振興局で「平成30年度施工優秀工事に係る機関長表彰式」が行われ、対象となった4社に対して村山弘司局長が表彰状と記念品を手渡した後、黒瀬雅仁検査指導幹が村山局長のあいさつの中で言及していた、災害対応功労賞の新設について報告した。


 これは、災害によって被災した道路など、公共施設のいち早い復旧を目指して、必要な機材や資材を揃えて作業にあたっている建設企業があることを周知させたいことを目的としているものだ。


 ややもすればこのような作業は“あたり前”であり、あまり注目されない。しかし、こういった建設業界の“見えない努力”をつまびらかにし、一社一社に感謝の意を表して表彰状を贈呈することは、画期的な事だとも言える。


 ここでは、五島振興局の村山局長と、(一社)長崎県建設業協会五島支部の戸田博之支部長に紙面に出ていただき、主に離島という地域に生きる建設企業の災害復旧支援活動について、行政と連携していかに地域を守っているかを聞くとともに、建設業界が今、現実的に課題として抱えている担い手確保のためにどういった活動をしているかを主軸にして聞いてみた。


―五島振興局で新たに設けられた「災害対応功労者表彰」について


 村山局長 7月20日に五島地域では、夜中から朝方にかけて線状降水帯により集中的に雨が降り続いたことによって、道路の冠水や土砂崩落により通行止になる箇所が多く見られました。そういった中で、建設企業の方々には災害に関する情報の提供や、あるいは機材や資材を迅速に整え、さらに災害復旧に向けた準備をいち早くしていただいたことに、まずは感謝を申し上げたいと思います。

 災害発生時において、地域に根づいた建設企業がどれだけ活躍しているのかを広く住民の方々に伝えるには、どのようにしたらいいかを模索する中で、今回新たに「災害対応功労者表彰」という表彰制度を設けました。これを契機に建設企業の持つ“公共性”や地域になくてはならないものであることについてもしっかりと伝えていきたいと考えています。


 戸田支部長 まずは、今回の五島振興局による新たな表彰制度について、感謝の意を表したいと思います。確かに昨今の報道を見ていますと、どうしても自衛隊や消防等の活動がピックアップされがちです。そういった中で、今回、五島振興局で建設企業の活動に光を当てて頂いたのは大変ありがたいことと改めて感謝を申し上げます。地域に生きる建設企業にとって大きな励みになります。今後も引き続きお願いしたいと考えています。


 村山局長 建協五島支部とは、平成18年に災害支援協定を締結させて頂きました。災害発生時には迅速に対応していただき、復旧に際しても、業者の方々がそれぞれの現場を抱えている中で、通行止め等の解消に向けて一丸となっていることに感謝を申し上げるとともに、今後も引き続き連携を強固にしていきたいと思っています。

 表彰は、初めての試みであり、制度は今後も見直しを図りながら続けていきたいと考えています。


 戸田支部長 我々のような地方に生きる建設企業にとって、郷土を守るということは、“使命”といっても過言ではありません。協定を結んでいることももちろんありますが、それに関わらず、普段から会員企業や行政とは連絡を密にしています。これは互いの信頼関係があってこそだと思っています。そして災害発生時には、まずは安全を確保しつつ動くように心がけています。でなくては二次災害にということにもなりかねません。自助・共助・公助という言葉がありますが、まず自分の身を守ることが基本であり大事なことと思っています。
 ある意味、五島列島や対馬、壱岐といった離島は、大陸側から見ると長崎県本土の防災の要という地形的な役割をも担っているようなところもありますから、それに即した整備を進めていくためにも、是非とも予算確保をお願いしたく思っています。建設企業が皆無な地域を生むわけにはいきません。また、五島支部においても防災訓練等を通して、万が一に備えて迅速に行動できる体制を整えていきたいと考えています。


 村山局長 五島を災害に強い島にしていくためには、まだまだインフラ整備をしていかなければならないところが多くあります。五島振興局としても整備を進めていくにはどういう形で動けば予算がしっかりと確保できるかを研究し、訴求していきたいと考えています。


 戸田支部長 災害が発生したとなると、いわば実働部隊である建協青年部の迅速な行動は欠かすことはできないと考えております。我々経営者は先にも申し上げましたが、まず自助という点で、自社の持つ従業員はもちろん現場の事も考えなければなりません。災害発生となった場合、大きな力を発揮するのは青年部の力ですが、しかし、その青年部自体も人数が減りつつありますので、将来的に不安なところもあります。


―担い手確保の取り組について


 村山局長 青年部の将来について危惧されているということですが、担い手の確保に向けては、建協五島支部の方々と連携しながら高校生、あるいは中学生に向けて建設企業の実際の仕事の中身について紹介させていただいております。おかげ様で、年々少しずつではありますが、建設業に対して興味を持つ生徒も増えてきたことと感じていますが、五島の人口流出問題として見た場合、いったんは島外に出て就職することは仕方ないにしても、戻って就職できるような仕組みの強化・発信も充実していかなければならない。情報の提供という点では、「土木の日」のイベントの取組みについても島民が誰しも周知しているように、青年部が中心となって積極的に取り組んで頂いているところです。



 戸田支部長 若手の育成については行政と五島支部がお互いに連携しながら、担い手の確保に向けて活動を進めていますから、これを継続していきたいと考えています。将来を決めるのは学生自身ですから、地域に生きる建設企業がいかに魅力的、かつ安定しているかを今後も学校に出向いての出前講座や職場体験等を通して、PRすることが重要だと考えています。今はまだ少数ではありますが、様々な活動を繰り広げることによって、実際に学生が建設業を選択していただいた例もあります。そういった活動を続けていくことでモノづくりの楽しさを知ってほしいと考えております。今後は、実際の作業体験を通じて建設業の魅力を伝えることなども組入れながら連携し、より有機的に活動していこうと思っています。



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