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【特別対談】「郷土を守る使命建設業界との連携」 /県対馬振興局・松尾誠司局長×県建設業協会対馬支部・眞崎龍介支部長

2020年01月28日(火)

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松尾局長

眞崎支部長

これからの連携を誓ってがっちりと握手

―昨年8月、50年に一度あるかという「記録的短時間大雨」により、対馬市は住宅の床下浸水や、通行止めになる道路が多発した。この有事に対して、最も早く行動し、復旧の初期活動にあたったのは地域に根付いている建設業者たちだった。
 ここでは、長崎県対馬振興局の松尾誠司局長と、(一社)長崎県建設業協会対馬支部の眞崎龍介支部長に紙面に出ていただき、対馬振興局から建設業協会対馬支部へ贈られた感謝状についてのあらましや、対馬支部での担い手確保の取組みとして、県下でいち早く“奨学金制度”を取り入れたこと等を主軸に対談を実施した。


災害復旧支援活動に対する感謝状の贈呈について


松尾局長 台風などによる自然災害が頻繁に発生している状況において、ここ対馬にも50年に一度あるかというような大雨により、大きな災害を被りました。そういった状況下において、我々が非常に助かりましたのは、まさに建設業協会対馬支部の会員企業の方々の尽力があったからと言えます。対馬支部とは、平成18年に災害に関する災害時応援協定を締結しているのですが、今回のような復旧活動が、一般的には注目されていないことに危惧を感じました。こうした背景も含めて対馬の安全・安心に貢献しているということを改めて知らせることが今回の感謝状贈呈の目的です。


眞崎支部長 対馬支部では協定締結の際に、予め道路や港の被災時にどの企業が担当するかをエリアごとに決めていました。復旧に最も大事なのは初期行動です。ただし、台風の最中は二次災害になるのを避け、収まってから行動を起こすよう周知しました。今回、こうして感謝状を頂いたことは支部を代表して非常にありがたく感じています。


松尾局長 対馬は南北約82㌔に渡る細長い地形の島です。全ての情報を把握するということは非常に困難なことで、各エリアの状況がどのようになっているかを逐一知ることができるのは、対馬支部の協力体制が整っているからと捉えています。


眞崎支部長 各エリアの担当企業には、自分の担当エリアだけでなく、近接する両隣のエリアへの協力もできるような体制も敷いています。これは、いつ、どこで、どんな災害が発生するかが予想できないからです。例えば被災したエリアの担当企業が、復旧作業に必要な重機を持っていない場合もあります。その場合には、エリアの垣根を越えて、協力できるような体制を築くことが必要です。


松尾局長 有事の時こそ対馬が官民一体、ワンチームとなって連携することが早期復旧に繋がります。そして河川改修整備をはじめ、道路拡幅事業などのインフラ整備の完成は、全県下の率から見ても極めて低く、進めていくべき箇所がまだ数多く残されています。


県下で初の試み“奨学金制度”を取り入れた意図とは


眞崎支部長 道路の拡幅事業に関しては、一時は訪日外国人旅行者が増加したことに比例して事故の発生が増えたため、我々対馬支部も道路拡幅事業の推進を県に要望してきましたが、現在は国家間の問題もあり、事故については収束傾向にあります。国境離島新法における補助金を基に、観光産業などの様々な分野で起業した方々が数多くいらっしゃいましたが、今は軒並み厳しい局面に対峙しているのが現状です。


 そんな今こそ、対馬全島民がワンチームとなり知恵を絞って趣向を凝らし、なんとかして島内への国内観光客を増やし、町が豊かにならなければ、我々のような建設業の請け負う事業量もそう簡単には増えません。つまりは、安定した経営ができないということです。


 これは“担い手の育成”にも関連してきます。なぜなら、就職希望者が望むのは、その企業の経営が、安定しているかどうかとだと言えるからです。そう考えたからこそ、対馬支部では皆で知恵を絞り協力し合って、5月に “奨学金制度”を創設しました。この制度は、若き就職希望者もさることながら、その親御さんにも安心していただくことを目的としています。大事な家族の一員が地元に残ってくれる―という手段になります。


松尾局長 確かに島内の技術者が不足していますし、就労者の平均年齢も55歳、そして60歳以上が4割を占めている―という状況ですから、島内にいる建設企業の将来や在り方を考える上で、非常に危機感を感じてしまいます。こういった状況下において、この奨学金制度を対馬支部が自発的に立ち上げたということは、県下においても初めての試みと言えますし、画期的な事ではないでしょうか。


眞崎支部長 この制度が画期的だと言われればそうかもしれませんが、それはやはり、我々自身が担い手について一番苦慮し、危機感を募らせているからだと言えます。これは我々が打ち出した手段であり、制度をうまく回していくためには“常に会員企業が安定して経営が成り立つような事業量を確保できていること”が前提となっています。担い手の確保、そして技術者を育成していくためには、安定した経営ができて初めて両輪として機能するということです。


松尾局長 現場でも従業員は足りていない現状ですから、我々もこの制度を周知させることがもっと必要ですね。それと同時に、例えばUターンで戻ってくる30代~40代の方もいらっしゃるので、建設業への入職を促すためにハローワークと連携して取り組んでいくことも考えています。 


眞崎支部長 学校の出前講座などに赴くと、まだ建設業(土木)に関して一時代前のイメージが蔓延っている気がしています。どうやら、今の子供たちの親御さんたちは、一昔前の「公共事業が著しく減少した時期のイメージ」が、強く残っているように感じます。ですから今後は、ドローン等の最新機器も活用して、土木工事でもこんなにテクノロジーが発達しているのだ―ということを知らせていきたいと思っています。


松尾局長 親御さんたちもさることながら、教える側の先生方も、現在の土木工事がの現状について十分に伝わっていないことがありますから、それは、これから根気よく、そして丁寧に理解を求めていくことも必要ですね。今回こうして話し合えたことをきっかけにして、他の地域ではまだしていないこと、対馬だからこそできるような先進的な取り組みにも連携して積極的に進めていきましょう。


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