~地域に生きる建設業~
【特別対談】「迅速な対応に感謝 担い手確保は官民一体で」 /県五島振興局上五島支所・丸亀俊一支所長 /県建設業協会五島支部・浜田哲男副支部長
2020年01月28日(火)
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―昨年7月、警戒レベルのうち最も高い “レベル5”にあたる大雨特別警報が五島列島を始めとする県内離島地域の市町に発令された。この豪雨災害による膨大な土砂崩落により、通行止めとなる道路が上五島・下五島地域で多発した。この有事に迅速に対応し、復旧にあたったのは地域に生きる建設業者たちだった。
ここでは長崎県五島振興局上五島支所 丸亀俊一支所長と、(一社)長崎県建設業協会五島支部から浜田哲男副支部長に紙面に出ていただき離島に生きる建設企業の災害復旧支援活動、そして建設業界が今、現実的に課題として抱えている担い手確保のためにどういった活動をしているかを聞いた。
五島振興局で新たに設けられた「災害対応功労者表彰」について
丸亀支所長 7月20日に五島地域では、夜中から朝方にかけて線状降水帯により集中的に雨が降り続きました。近年では経験したことのない気象状況により、新上五島町でも道路の冠水や土砂崩落により通行止めになる箇所が多く見られました。そういった状況下にも関わらず建設業の方々が災害に関する情報の提供、あるいは機材や資材を機敏に整えたことによって、いち早く復旧させて頂いたことに、まずは感謝を申し上げたいと思います。支所では9社を対象に表彰させて頂き感謝の意を表しました。
浜田副支部長 まずは、9社を代表してお礼申し上げます。私たちからすると、こうした活動は地域の守り手という側面もあることから、至極当たり前のことなのですが、改めて災害に対する対応を評価していただいたということで嬉しく思っています。また、建設業者は工事をするだけではなく、“地域に必要”であるということを「土木の日」を選び、一般の参加者が大勢いらっしゃる前で形にしてもらった―ということに感謝したいと思います。
丸亀支所長 子供達に対しても正しい認識と、カッコいいなという憧れなど、就業促進の一つのいいきっかけづくりになった気がします。そしてまた、新上五島町内にはうまく業者が散らばっているというのもいいですよね。
浜田副支部長 皆さん地元ですからね。土地勘もあります。今回の災害に対しても迅速に対応できたのはそういった側面も確かにあります。しかし、30年程前に比べると業者数が減少し、人も重機も減っていますから、何班にも分かれて一気呵成に作業にあたる―ということはできずに、道路の使用頻度に合わせて、優先順位をつけながらの作業を進めることになりました。
丸亀支所長 やはり、一定数の建設業者が維持できるための事業量が必要だということを、この身にひしひしと感じています。一時期、コンクリートより人へ―といったスローガンのもとで建設業の不要論などもありましたが、国土強靭化地域計画の策定を、新上五島町でも早速着手して進めていますから、これからも皆さんの意見を聞きながら、工事の平準化などに積極的に取り組んでいきたいと考えております。今後も官民一体となり連携しながらいい関係を築いていきたいと考えております。
浜田副支部長 事業量確保や人的問題は、国土強靭化地域計画策定など、今後の事業計画がしっかり見えていれば、建設業者としても予定が立ちますから、先を見据えた対応がとりやすくなるので、それを維持し継続させて頂きたいと、切に願っています。
担い手確保の取り組について
丸亀支所長 日本全国、建設業に限らず、全産業で高齢化は進んでいます。しかし、中でも建設業は他業種と比べても高齢化が著しく、現実的な課題であります。若手の就職を促すために週休2日制やあるいは、女性の就労促進、中・高校への出前講座などを積極的に行うことで環境改善をしていくことが必要となってきています。
浜田副支部長 今、おっしゃっていただいたような出前講座はもう数年前から取り組んでおります。特に昔からの建設業に対するイメージの払しょくに力を注いでおります。時代の変遷とともに土木の現場にもテクノロジーが取り入れられ、肉体労働というよりは、技術者、オペレーターとして現場をコントロールしていくという現実を、より理解してもらえるように説明しています。また、私たちが入職したころと比べれば休暇も随分と多くなりました。まだ完全週休2日制とは言えませんが、今後促進していくものとして説明しています。こうした現状を分かりやすく解説することで、講座を実施する前と後のアンケートでは、いい意味で確実に違ってきていますから、講座を続けてきてよかったなと思っています。実際に建設業に就職したという話もあります。
丸亀支所長 私たちの就職時期には、こんなに丁寧で親切な取り組みはありませんでしたよね。受講してイメージが変わり、正しく理解して就職してもらえればこんなにいいことはありませんよね。また、一旦島外に出た方がUターンで帰ってきた場合にも選択肢の一つとして建設業を選んでいただければいいと思いますね。そのための取組みもハローワークなどと連携して実施中です。
浜田副支部長 「土木の日」のイベントの取組みについても島民が誰しも周知しているように、青年部が中心となって企画や準備など積極的に取り組んでいるところですが、私が青年部長をしていたころと比べても大幅に人数が少なくなってきました。部員の在籍年齢も上げましたが、現実的に近い将来、今いる部員が高齢化してしまうと、青年部の存在自体が危ぶまれるという危惧もあります。担い手の確保に向けては、官民一体となって連携しながら高校生、あるいは中学生、さらにはUターン者や親御さんに向けて、これからも積極的にアピールしていきたいと考えております。
丸亀支所長 私も今後、学生の前で建設業の説明に立つ際には、実際の仕事の中身もさることながら、今回のような災害復旧活動や、土木の日などのボランティア活動も紹介し、まさに地域をけん引するリーダーとなってもらえるような説明をしていきたいと思っています。