【日本建設技術】水産養殖用ろ過材「クリスタルバイオ」 /アンモニアと窒素が低減
2019年01月01日(火)
特集記事
その他
日本建設技術㈱(本社・佐賀県唐津市北波多、原裕社長)は、建設廃材の板ガラスや容器包装の空き瓶、車のサイド・リアガラスなど、ガラス廃材をリサイクルした多目的環境材料「ミラクルソル」(発泡廃ガラス)を開発。廃棄物を建設分野で有効利用する「低炭素建設技術」として28工法(緑化、土木、水質浄化など)を提案している。このうち、水産養殖用ろ過材(水質浄化)として使用する「クリスタルバイオ」、FWG透保水性舗装工法の特徴などについて、同社の原社長に聞いた。
◇ ミラクルソル工法開発の背景
1990年頃から、リユースが難しい容器包装の廃ガラスびんは年間約150万㌧排出されており、その大半が埋め立て処分となっている。近年、最終処分場の建設が困難な時代になり、ガラス廃材の再資源化技術の確立のため、95年から2年間で比重0・4の緑化保水材と軽量盛土用の新素材を開発した。その新素材をミラクルソルと名付け、建設分野に再利用する構想を練り、自然環境の保護・保全・創出ができる環境に配慮したミラクルソル工法は現在、28工法になっている。
◇ミラクルソルの構造および特徴
ミラクルソルは多数の内部間隙を有し、軽量かつ強固であり、比重を0・3~1・5、再クラッシャーすることで粒径の調整もできる。また、製造条件により、間隙が互いに独立して存在する独立間隙構造のものと、間隙が連続して存在する連続間隙構造のものが製造できる。
水産養殖のろ過材と透保水性舗装や岩盤緑化に使用する吸水性のミラクルソルは、比重が0・4の連続間隙構造を用いる。ミラクルソルの吸水試験結果は比重0・4で質量比の約135%であり、連続する間隙内にバクテリアを増殖し水分を吸収するため、保水性に優れている。
◇水産養殖ろ過材「クリスタルバイオ」の特徴
クリスタルバイオは微細な気孔を有する多孔質なろ過材であり、単位体積当たりの比表面積が非常に大きいため、水質浄化に適しており、微生物の繁殖基盤材となる。
浄化に適する微生物の繁殖領域が広く、軽量であるという特徴を持っているため、ろ過槽への充填作業や洗浄などのメンテナンス作業において、作業効率が良いろ過材といえる。
◇クリスタルバイオの硝化速度
クリスタルバイオの浄化機能を数値化するために硝化速度を確認する実験を行った。実験は単位体積当たりのクリスタルバイオが単位時間当たりに分解(硝化)するアンモニアの濃度を「硝化速度」と定義した。ろ過材には比重0・4と1・2のクリスタルバイオ、市販のろ過材(ガラス系)を使用した。人工海水を用い、硝化菌培養槽で各ろ過材に硝化細菌を繁殖させた。
硝化菌培養槽では硝化細菌のエサである塩化アンモニウムを添加した後、24時間でアンモニア性窒素が硝酸性窒素に安定的に分解されるようになるまで培養を行い、ろ過材ごとに分けてそれぞれのろ過材の硝化速度を測定した。
実験の結果、3種類のろ過材の中で、比表面積が最も大きい比重1・2のクリスタルバイオの硝化速度が速い結果が得られた。
クリスタルバイオは桁外れの接触表面積を持っており、好気性バクテリアを大量に繁殖させるため、アンモニアの分解が安定的に行われ、製品自体が弱アルカリ性でPH緩衝機能を有するため、硝化によりPHの大幅低下を防ぎ、飼育水を弱アルカリ性に保つ。
アンモニアの分解速度が速く、硝酸性窒素の蓄積量が少なくなるのが特徴。軽量であるため、種々のろ過槽に対応でき、ろ過材の充填や水替えなどの作業も容易となる。
◇クロマグロのろ過材として使用
国立研究開発法人水産研究・教育機構西海区水産研究所にも約6年前にクロマグロの完全養殖を目指し、比重1・2のクリスタルバイオ約200立方㍍がろ過材として使用されている。
「FWG透保水性舗装工法」 路面の温度上昇を抑制
◇FWG透保水性舗装工法の特性
歩道部やパーキングエリアに透保水性舗装を実施することで、降雨や打ち水により、インターロッキングブロックやミラクルソルの層に保水された水分が蒸発し、気化熱により路面温度を低下させ、風の道による熱の排除効果があり、周辺の温度上昇をも抑制する透水と保水機能を合わせた特性を持つ。
◇ミラクルソルの水分吸い上げ特性
気化熱を発生させるためには継続的に路面が水分を保持しておく必要がある。実験データなどから、透水性アスファルトの下部と透水性アスファルトの間隙の中にミラクルソルの2㍉アンダーを用いることで、ミラクルソルの水分保持機能が増加することが判明している。
◇透水性アスファルトとミラクルソルの併用
舗装表層が空隙率15・3%の透水性アスファルトで、空隙が大きいためにアスファルト下部のミラクルソル層に保水した水分で確実に毛管現象を発現させ、アスファルト舗装下部のミラクルソル保水層に接触させるため、ミラクルソルの2㍉アンダーを2回に分けてアスファルト表面に散布し、散水することによって空隙内を充填した。
現場施工での6月から9月での温度測定結果から、従来工法と比較してミラクルソルの保水効果により、FWG透保水性舗装工法では最大で約16・5度の温度低下を確認できた。
ミラクルソルを保水層として層厚20―30㌢にすることにより、水分保持量が増加し、長期にわたり路面温度低下を維持させることが可能になる。
道路だけでなく、高速道路のパーキングエリア、公共施設やマンション、一般家庭の外溝部にFWG透保水性舗装工法を施工することにより、外気温度の低下を見込むことができる。