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日本建設技術が「ガラス廃材を再資源化した水質浄化材」で「発明奨励賞」を受賞

2022年01月04日(火)

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発明奨励賞の受賞者。中央が原裕社長、左から2番目が荒木宏之顧問。

ミラクルソル工法地域イラスト

施工状況

ミラクルソルの上部に水草が繁茂する様子

 日本建設技術㈱(本社・佐賀県唐津市北波多、原裕社長)は、建設廃材の板ガラスや容器包装の空き瓶、車のサイド・リアガラスなど、ガラス廃材をリサイクルした多目的環境材料「ミラクルソル」(発泡廃ガラス)を開発。廃棄物を建設分野で有効利用する「低炭素建設技術」として28工法(緑化、土木、水質浄化など)を提案している。このうち、「ガラス廃材を再資源化した水質浄化材」(クリスタルバイオ)が公益社団法人発明協会から「発明奨励賞」を受賞し、2021年度九州地方発明表彰式で表彰された。

  • ミラクルソル工法開発の背景

 1990年頃から、リユースが難しい容器包装の廃ガラスびんは年間約150万㌧排出されており、その大半が埋め立て処分となっている。近年、最終処分場の建設が困難な時代になり、ガラス廃材の再資源化技術の確立のため、95年から2年間で比重0・4の緑化保水材と軽量盛土用の新素材を開発した。その新素材をミラクルソルと名付け、建設分野に再利用する構想を練り、自然環境の保護・保全・創出ができる環境に配慮したミラクルソル工法は現在、28工法になっている。


  • ミラクルソルの構造および特徴

 ミラクルソルは多数の内部間隙を有し、軽量かつ強固であり、比重を0・3~1・5、再クラッシャーすることで粒径の調整もできる。また、製造条件により、間隙が互いに独立して存在する独立間隙構造のものと、間隙が連続して存在する連続間隙構造のものが製造できる。


 水産養殖のろ過材と透保水性舗装や岩盤緑化に使用する吸水性のミラクルソルは、比重が0・4の連続間隙構造を用いる。ミラクルソルの吸水試験結果は比重0・4で質量比の約135%であり、保水性に優れている。また連続する間隙内は、バクテリアが増殖しやすい環境となるため、優れた水質浄化機能を持つ。


  • 水産養殖用ろ過材「クリスタルバイオ」

 近年、地球温暖化現象が大きな問題としてクローズアップされている。特に海水温度の上昇に伴い、海水魚の安定的な陸上養殖・藻場の造成といった実証実験が行われている。


 2000年から、水産養殖のろ過材としてガラス廃材の再資源化を目的として開発してきたミラクルソルを、淡水・海水魚のろ過材(クリスタルバイオ)として用いることにした。これにより養殖魚の水質浄化、とくにアンモニアと窒素の低減が可能となった。


 2008年2月からは水産養殖のろ過材として、ヨーロッパやアメリカ、カナダ、東南アジアなど15カ国にクリスタルバイオを輸出している。


  • 淡水魚(ニシキゴイ)飼育

 ニシキゴイの飼育実験では、ろ過材として比重0・4のクリスタルバイオとプラスチックフィルターを使用し、両者の浄化性能を比較した。ニシキゴイの飼育実験の結果、クリスタルバイオの方が優れた浄化機能を持ち飼育水槽内での硝酸性窒素濃度の蓄積が確認できないくらいの濃度であった。また、硝化によるPHの低下は、プラスチックフィルターに比べ、クリスタルバイオの方が穏やかであった。


 クリスタルバイオの製造時にはアルカリ性の発泡剤を混合するため、硝化に伴うPHの急激な低下を抑制したと考えられる。


  • 海水魚(マダイ)飼育

 マダイの飼育実験では、ろ過材として比重0・4のクリスタルバイオと硝化機能が高いといわれるサンゴを使用した。


 飼育魚の密度を徐々に増加させながら(飼育密度1―10㌔/立方㍍)実験を行った結果、クリスタルバイオとサンゴは同等の硝化機能であることが確認できた。また、クリスタルバイオはサンゴに比べ硝化によるPHの低下が見られ、硝化に伴うPH低下が抑制された淡水魚飼育実験の結果とは逆の結果となった。サンゴは約90%が炭酸カルシウムで組成されているため、サンゴが溶解することで硝化に伴うPHの低下を抑制したと考えられる。


 実験結果から、クリスタルバイオの浄化特性を確認することができた。閉鎖循環式の飼育設備においてクリスタルバイオを長期間使用する場合には、硝化反応に伴ってPHが低下していくと考えられる。よって、生物ろ過材の一部にサンゴやカキ殻などを用いることでPH低下を抑制でき、良好な水質を維持できると考えられる。


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