高校生作文コンクール受賞者に聞く② /建設業へ馳せる〝想い〟と〝夢〟
2022年01月04日(火)
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昨年10月、国土交通省と建設産業人材確保・育成推進協議会(事務局・建設業振興基金)が「高校生の作文コンクール」の受賞者を発表。このうち、県内から不動産・建設経済局長賞1人、優秀賞3人が栄誉に輝いた。今の若者に建設業はどのように映っているのだろうか―。作文に込めた思いと建設業に馳せる夢などを聞いた(高校生作文コンクール受賞者に聞く①はこちら)。
優秀賞「伝統をつなぐプロフェッショナルに」
長崎県立長崎工業高等学校建築科1年・辻田陽彩さん
歴史ある建物を次世代に引き継ぎたい
作文には、将来、宮大工になって実践したいことを書きました。その思いが、審査員の方々に届いたのが嬉しいです。
中学の修学旅行で、たまたま下鴨神社(世界遺産、京都市左京区)の塀の修理をしている現場に遭遇し、宮大工の方々がミリ単位の僅かなズレにも気を配る緻密な作業をしている姿に感動したのが、宮大工を目指すきっかけです。
釘を使わない日本ならではの木組み工法で寺社を建てることは、昔からの思いを繋いでいるように感じました。自分も、長い年月存在し続ける建造物を高い技術で守り、次の世代に引き継いでいくことができるよう、今は建築科で学んでいます。
高校卒業後は、富山県にある専門学校への進学を目指しています。宮大工の専門学校は他にもありますが、実際の建築物の修繕現場などで演習ができるところに惹かれました。実際にどのくらい修業すれば良いのか分かりませんが、富山で技術と経験を積んで、少しでも早く一人前の宮大工になれるよう頑張ります。
京都の街並みは、現代の建物と歴史ある建物が共存していますが、長崎をはじめ、日本のほとんどのまちはそうではありません。でも、どのまちにも歴史ある寺社仏閣や建物があるはずです。全国を飛び回って、それら古くから残る建物をしっかり修繕し、次の世代に引き継いでいきたいです。
優秀賞『あたりまえ』
佐世保工業高等学校建築科3年・上村妃向さん
〝現場監督〟で活躍したい!
今回「高校生の作文コンクール」で優秀賞をいただいたことはすごく嬉しい。
建築に興味を持ったのは、小学校の頃、組立てタイプの本棚を買ってもらい、自分で組み立てたことがきっかけです。そこから建築やものづくりについて調べるようになり、さらにのめり込んでいきました。そして、工業高校の建築科に進み、いろいろなことを学びました。
最近は建設現場でも活躍する〝建設女子〟が増えてきているため、自分たちも同じように建設現場で活躍できる人になりたいと思っています。学校でも、男子生徒に交じり、性別に関係なく同じ実習をしています。私の性格も負けず嫌いなため、男子には負けない気持ちがあります。
「女性だからこんな仕事は無理」と自分や他人を否定するような言葉や考え方ではなく、「自分がする」という考えを持って、性別に関係なく活躍できる職場が増えるといいなと思います。
来春から、北九州にある九州職業能力開発大学校の建築科への進学が決まっており、さらに4年間建築について学びます。卒業後は、現場監督の仕事をしたいので、大学校でさまざまなことを学びながらじっくり探したいです。
優秀賞『つなぐ』
佐世保工業高等学校建築科3年・吉川美琴さん(吉の字は土に口)
一級建築士のつなぐ姿が魅力
実は、この作文を書くまで、建設業について深く考えたことはありませんでした。作文が、建設業の魅力や、建築が人々の生活に与える影響について考える機会になったことが、自分の中ですごい収穫でした。
建築に興味を持ったきっかけは、小学六年生の時に見たテレビのリフォーム番組。そこで、さまざまなモノとモノや人と人などをつないでいく建築士の姿に魅力を感じたからです。やはり、建築の一番の魅力は、そこにあると改めて思いました。高校卒業後は、北九州市立大学に進学し、建築についてさらに4年間勉強します。将来は、一級建築士の資格を取得し、建築関係の仕事に就きたいです。
最近は、建設現場で活躍する女性が増えています。佐世保工業高校の建築科でも女子生徒が年々増えています。多くの女性が建築に興味を持ちはじめていることはすごく嬉しいし、将来みんなと一緒に仕事ができれば素晴らしいです。
でも、女性が現場で働くことに抵抗がある人もまだいると感じています。今後私が現場で活躍することで、女性が現場にいることが当たり前な社会の実現へ、少しでも役に立てればと思います。最終的には、建築の仕事を通じて、いろいろな〝つなぐ〟を広めて行くことが目標です。