特集記事

理路雑然―191―

2022年02月19日(土)

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理路雑然

理路雑然

 オリンピックの表彰台でメダリストの国の国歌が流れ、選手も歌詞を口ずさむ。感動の場面だ▼日本の国歌「君が代」は明治期から歌われてきた。他の国と比べると穏やかで短さが際立つ▼君が代は千代(ちよ)に八千代(やちよ)にさざれ石の巌(いわお)となりて苔(こけ)のむすまで▼その意味は、「あなたの命が、小さな石が長い年月をかけて大きな石となり、その石に苔がつくまで、永く永く続きますように」だ。「君」は天皇の意味だと思っていたが違うらしい。「あなた」と訳していい。千年以上前の古今和歌集に起源がありこれまでお祝いの歌として使われてきたとある▼「さざれ石」は全国に見られ、長崎市の諏訪神社にも奉納されている。学術的には石灰質角礫岩といい、コンクリート(混凝土)とほぼ同じらしい▼世界の国歌は力強く元気なものが多い。歌詞は勇ましく戦意高揚を促し、かつ血なまぐさい。他民族との争い、血みどろの内戦をへて独立を勝ち取った歴史が背景にある▼その単語を少し抜き出すと、アメリカは「危機」「城壁」「砲弾」「敵の軍勢」「彼らの血」、イギリスは「勝利」「暗殺者」「敵」「反乱」、中国は「隷属」「血と肉」「敵の砲火」「危機」、フランスは「血染め」「武器をとれ」「不浄な血」「暴君」「残酷」「棺」と物騒で粗暴な言葉が並ぶ。その歴史が国歌として歌い継がれてきた。つまり国民の感覚が我が国と全く違う▼「君が代」を話し言葉でいうと「あなた元気でうんと長生きしてね」となる。人をおもんばかるそんな国歌だ。我が国に相応しく柔(やわ)ではあるが、「和の国柄」そのままなのは誇りではある。


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