理路雑然―194―
2022年04月02日(土)
特集記事
理路雑然
よく「報奨金規程」という制度を見掛ける。会社に利益をもたらしたり、表彰や評価が高い仕事の責任者が対象になる▼世の中、損か得かは大きな動機。国も企業も個人も、利益を求め動いている。しかしものごとをお金だけで計ると逆効果になることがある▼例えば電車で席を譲られたときお金を渡したら失礼だ。引っ越しの手伝いをしてくれた友人や、慈善運動している人への謝礼金はプライドを傷つけるかもしれない。被災地のボランティアに日当を渡せばおそらく参加しなくなる。なぜなら博愛心や公正、正義感、信頼や友情、義務感が強い動機だからだ。国も企業も個人もそんな場合がある▼金銭が目的のものとそうでないものを区別しないと逆の効果を生む。ノーベル賞は一億円以上の賞金があるが、それが目的の人は多分いない。勲章・褒章や感謝状などは記念の品はあっても賞金はない。金銭に換えられない価値があると思っているからだ。反対に賞金がその価値をおとしめることになる▼逆もある。どんなに親身になってアドバイスをくれる弁護士も税理士もただではない。医療や介護の献身的な活動も、仕事への報酬がしっかりしていなければできない。海外でのホテルやレストランでのチップは給仕の賃金の一部になっている。損になることを期待出来ない部類だ▼金銭的動機と非金銭的動機は違うこと、あるいは世の中はそのバランスの上に成り立つことを知っておく必要がある▼勤労や努力に対し「報奨金」制度はあっても、あくまでそれを讃える「報奨」が主たる目的であることは忘れてはならない。