理路雑然―196―
2022年05月07日(土)
特集記事
理路雑然
人の感情を「喜怒哀楽」というがその中でも「怒」は厄介な代物だ。本能でありほかの生き物にも観察される。進化の過程で得た争いと自己防御なのだ▼怒りを抑えムッとする、顔色が変わる、いよいよ感情を抑えられなくなって理性を失い「切れる」「癇癪」「腹の虫が治まらない」などがある。怒りはコントロールするのが難しい。さらに怒り同士がぶつかれば余計面倒だ。冷静な人はやり返すユーモアを考えられるのだが簡単ではない▼古くは心の中には考えや感情を引き起こす虫(回虫)がいると考えられていた。回虫は体のあちこちに悪さする。脳の中にさえ進入するらしい。日本では少なくなったが発展途上国ではその被害が残っている。ペットにも見られるそうだ▼怒りの感情を左右するという虫はきっと不満を餌にしている。不満を食べて活発になり怒りを引き起こす。驚くのは、昔の人が怒りの感情を虫が引き起こすと考え、その本質を見通していたことだ▼今はコロナ禍の行動制限によって皆の不満は溜まっている。あれもダメこれもダメ、ダメばかり。虫がエネルギーを蓄えているわけだ。けれども相手は姿の見えないウイルス。消毒やマスクだけではやっつけられない。代わりに怒りをぶつける相手は、政治であり行政でありマスコミであり医者であり回りの人への八つ当たりになる。それも過ぎれば冷静さを欠く人と軽蔑されるのでご用心▼そんな虫の退治に効く薬は「喜」「楽」だろう。喜ばしいことや微笑ましいこと、趣味やスポーツなどがある。集まって、食事、乾杯、大騒ぎできないのは悩ましいが、代わりの何かを見つけたい。