理路雑然―200―
2022年07月02日(土)
特集記事
理路雑然
今は回転寿司が主流になっているので知らない人も多いだろうが、寿司屋のセットメニューといえば、特上・上・並(松・竹・梅)があった。普通は並か上、時に懐が暖かいときは値段の高い特上を選ぶ。特上にはウニや大トロが加わっている▼ランチやディナーの定食は大方の人が「中」の標準的なものを選んでいるそうだ。あれこれ品揃えしても、店はその中に標準案「中」を忍ばせておく。統計的に上下の極端は選ばれないからだ。店の狙いはそこにある▼着る物やバッグは色や形がさまざまでも、客は目新しいものより馴染みのあるものを選ぶ傾向が強い。その現状維持の傾向は損失を回避する意味がある。得するよりも損したくない心理が働く。得したという感情はすぐに薄れるが、失敗したという後悔は長く続く。人が保守的な理由だ▼高級車に乗っている人の話では、手に入れたときは満足感と自慢の気分でいっぱいだった。ところがそれは長くは続かなかった。乗り心地は当たり前になり、そのうち小さな傷ができると「傷もの」に思えた。定期点検や交換部品費用も高く付く。徐々に不満が満足感より大きくなった▼豪華な家も同じような話がある。作ってお仕舞いではない。部屋の掃除が大変だ。空調設備や外装の費用も大きい。庭の植木や池に毎年お金がかかる▼そもそも人は欲しい、好きだと思うと、伴う費用やリスクを過小に感じる。プラス面とマイナス面を比較するべきだが実際には無理なこと。あばたもえくぼ、欲しいと思ってしまうと計算が片寄る。結局の所、「中」の「そこそこ」がいい。