特集記事

理路雑然―201―

2022年07月16日(土)

特集記事

理路雑然

 世の中には器用な人がいる。何でも作ってしまうし知識も豊富、細かいことに気がつき重宝がられるが、器用貧乏という弱点はある▼数千年前の人は皆器用でなければ生きていけなかった。食べ物を育て手に入れ料理した。服も家も家具も、あらゆる道具も自分で作るしかなかった。時を経るにつけ分業が進みさらにすべてのことに専門性が増す。その方が当然効率いい。今や米も肉も野菜も家具も自分で作っている人はまれだ。お互いができないことをやりくりしている▼馬車は職人が全部を作っていた。しかし自動車へ変わると、シャーシ、ボディ、エンジン、外装、内装、塗装、電装の製造と整備などに分かれた。これから電気自動車になればガソリンエンジンの知識は無用になる。必要な技能は変化する▼医者だって映画「赤ひげ」や「ブラックジャック」の主人公みたいな何でもありの医者はもういない。外科、内科も細かく細かく分かれ、かつ深くなっている。だが専門性は安心感もくれる。知りあいの医者が、専門以外の分野は実は素人に近いと正直に言っていた。分業とその細分化の進行は今も真っ只中▼建設業もそうだ。設計、材料、機械と操作、運搬、鉄筋組み、型枠、足場、施工管理などそれぞれが職人的な分業で進められる。別の分野に移動すると技能を活かすことができない素人だ▼しかし、できれば作業の流れ上、前仕事と後仕事を知っている器用な人がいると仕事は円滑に進む。多能工といわれる重宝な技能者だ。特に地方の中小零細建設業が育て、大切にしなければならないのはそんな人材だろう。


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