特集記事

理路雑然―204―

2022年09月03日(土)

特集記事

理路雑然

 価値と価格は違う。大切さの度合いが価値であり、価格は値段(お金)に換算したもの。似ているが混同してはいけない▼そもそも人以外の生き物にとって金銀財宝、貴重品はなんの価値もない。価値があるのは食べ物や繁殖相手や家族、安全な隠れ家くらい。当然価格はなんの意味もない。猫に小判とはよくいったものだ▼テレビ番組「お宝鑑定団」の人気があるのは、ある人にとってゴミ同然の物が別の人にとっては高価な宝物だったり、全くその逆になる意外さだろう。持参した自慢の品が安物だと鑑定されると、視聴者は笑いものにし、予想外の値が付けば驚きと歓声が起こる。実に人の心理をついている▼価格の根拠は価値ではなく取引の値付けにある。売る人と買う人の関係で値段が決まる。宝石や美術品などはその世界の相場があるようだ。しかしよく見回すと、不動産の価格や株価も石油だって野菜だって同じだ▼分かりにくいのは、マニアといわれる人の収蔵品だ。これは難しい。トイレットペーパーのコレクションの価値はマニアにしか分からない。トイレットペーパーがその使用目的以外の価値は理解不能だ。何を大切に思うかでゴミくずか貴重品に分かれ、価値も決まる▼我が身で価値を考えてみた。英国高級生地で仕立てたスーツ、ダイヤをちりばめた超高級スイス時計、ワニ革の財布はつり合わない。これまでも高級ブランド品に魅力は感じなかった。やせ我慢ではなく、安物でも自分が目利きしたものを誇りにしている。これからも価格より価値を大切にして行きたいものだ。


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