特集記事

理路雑然―207―

2022年10月15日(土)

特集記事

理路雑然

 新幹線はレールの上しか走らない。位置が外れれば脱線する。地下鉄の発着が秒単位で正確なのは、運行管理センターが細かくデータを把握しているからだ▼旅客飛行機はどうだろう。最新精密器機のかたまりに思えるし自動操縦で寸分の違いなく飛行しているに違いない。飛行ルートは緻密に計画され、高度と速度も予定通りとまではいかないがかなりの精度(90%以上)だと想像していた▼ところが実はその精度は0%、全く運航計画通りではないと本で読んで驚いた。同じ路線でもルートはその時その時。気流や天候、着陸空港の混み具合、燃料、ほかの飛行機との間隔などで「いきあたりばったり」変化しているという▼いや、次々と修正し変化させているから上手くいくのだ。厳密に決められたとおりに飛べばまず失敗する。車の運転もハンドルを硬く握りしめたままだと事故になる。ミサイルも自動誘導で目標に細かく進路を変える▼我々は何かをやろうとするとき、理想的な状況でことをもくろむ。変わりそうなことを想定し計画するのはまあいい方だ。しかし現実は思いがけないことが起きる。往々にして計画は予定通りにならない。とりわけ念入りに計画しているほど身動きが取れなくなる。好い加減さを計画に組み込んでおくことが理想なのだ▼とはいえ、いうは易くおこなうはかたし。車の完全自動運転のAI(人工知能)は想定外の事態に対応できるのだろうか。福島の原子力発電所は津波を計算し尽くしていたはずなのにまさかは起きた▼鉄道や飛行機、車の運転、それに私たちの仕事や行動も、ハンドルを細かく動かすように微調整して精度0%の方がいい。


TOP