高校生の作文コンクール受賞者に聞く建設業への“想”いと“夢” /不動産・建設経済局長賞「建築界の未来」長崎工業高校3年・秋山莉里花さん
新たな夢に向けて建築と芸術の融合へ
2023年01月04日(水)
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国土交通省と建設産業人材確保・育成推進協議会(事務局・建設業振興基金)が、高等学校の建築や土木学科の生徒を対象に毎年実施している『高校生の作文コンクール』。2022年度は857作品の応募があり、県内から唯一、長崎工業高等学校建築科3年の秋山莉里花さんが、『建築界の未来』で不動産・建設経済局長賞を受賞した。今の若者に、現在の社会そして建設業はどのように映っているのだろうか―。秋山さんに作文に込めた思いと今後の夢などを聞いた。
作文に書いた通り、建築に興味を持ったきっかけは小学6年生の時の熊本地震です。楽しみにしていた熊本への修学旅行が変更になり、気を落とす私を気遣って両親が連れて行ってくれた熊本で、地震の被害を目の当たりにし、何もできない自分に無力さを感じたのです。
私は「建築士になって地震に負けない丈夫な家をつくりたい」と、工業高校の建築科に入学しました。そこで直面したのはコロナ禍。入学式から厳しい行動制限下。泳ぐのが好きだったので入った水球部の活動も、停止になったり、試合が無くなったりしました。思うような活動ができない状況が続く中で、〝感染症などのウイルスを排除することのできる家〟を作ることが私の新たな夢になり、作文にもそう書きました。
私の学校生活での一番の思い出は、高校3年の体育祭。建築科の5連覇達成だけでなく、競技中にマスクを外すことが許され、コロナ前に戻った気持ちで競技することができたからです。コロナウイルスと共に過ごした学校生活での、数少ない楽しい思い出の一つです。
卒業後の進路を考える中で、私は、さらに新しい夢を抱いています。
そのきっかけをつくってくれたのは、またも両親です。コロナのせいで思い出づくりがなかなかできなかったからと、3年生の夏に家族で行ったプロジェクションマッピング。光や音・映像を駆使した芸術的な空間を体感し、「こんな状況下でも、人を楽しませたり、感動させたり、心に残るようなことができるんだ。私もやってみたい」と思いました。
そこから進路を転換。来春から、美術系学科のある県外の短大への進学が決まりました。大学では、高校で学んだ建築の知識を生かして、芸術と建築の融合、映像と建築物・風景を融合させた作品づくりに励みます。そして将来、みんなを楽しませ、思い出に残るようなプロジェクションマッピングに携わる仕事に就き、特に長崎では、歴史的建造物や観光地を生かすような作品に取り組みたいです。
担任・田島由佳子教諭のコメント
クラスでは、2年生と3年生の時に、長崎の歴史や文化を調べて発表する〝ふるさと委員〟を担当。3年では学校の委員会のトップ(委員長)を務め、文化祭の企画・運営を担いました。地元に対する思いが強いので、世界遺産をはじめとする建造物などの歴史や文化を幅広い人たちに分かりやすく伝えられるようなプロジェクションマッピングを実現し、長崎の観光に貢献してほしいです。作文を見ても分かるように、人の気持ちを理解できる非常に感受性が強い生徒なので、見る人に寄り添った、見る人を楽しませる作品づくりに期待しています。