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第35回「測量の日」に寄せて/国土地理院 高村祐平院長

2023年06月03日(土)

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国土地理院 高村祐平院長

 「測量の日」は、測量法が昭和24年(1949年)6月3日に公布されてから平成元年(89年)で40年を迎えたことを機に、測量と地図の役割と重要性について多くの皆さまに理解を深めていただくことを目的として制定され、今年で35回目となりました。私事ながら、当時の建設省に入省したのが平成元年ですので、「測量の日」とともに年を重ねてきたことになります。引き続き、測量や地図の重要性が広く世の中に理解されるよう努めて参りますので、関係の皆さまの御協力をよろしくお願いいたします。


 さて、政府は第4次の地理空間情報活用推進基本計画を昨年3月に策定しました。そこでは、「誰もがいつでもどこでも自分らしい生き方を享受できる社会の実現に向けて、防災、経済、生活などさまざまな分野における地理空間情報のポテンシャルを最大限に活用した多様なサービスの創出と、官民連携による自律的・安定的かつ適切な提供の実現を目指す」としています。


 その実現には産官学の多様な主体の連携によって取り組む必要がありますが、多くの主体が関わるが故に、位置情報を整合させるための共通ルール(国家座標)の推進などで、政府が引き続き積極的な役割を果たすことが求められています。


 国土地理院では「高精度測位時代に不可欠な位置情報の共通基盤(国家座標)の推進」を図ることとし、GNSS衛星の位置情報の安定的な提供、民間等電子基準点の性能評価、3次元点群データの整備、航空重力測量の実施と新たな標高基準の整備・提供、地殻変動補正の分解能向上などに取り組んでいるところです。


 現在、地理空間情報の活用のさらなる広がりが期待されており、その背景には、急速に進化したテクノロジーにより、誰でも簡単に地理空間情報プロダクトが作成できるようになったことがあげられます。測量の知識など不要で、光学センサーやレーザーセンサー、レーダーセンサーを搭載したさまざまなプラットフォームから撮影すると同時に、正射画像や3次元データが瞬時に生成されますが、国家座標に準拠したものではないことが多々あります。


 分野ごとに異なる座標系が利用され、不十分な精度、地殻変動の影響や位置の基準の不統一があり、それぞれの位置を合わせるには人手とコストを要するため、情報の流通が進みません。地理空間情報の活用推進には、システムとしての国家座標を確立し、現場においては測量士をはじめとする技術者が職責を果たすことが不可欠なのです。


 明治維新によりあらゆる分野で近代化が始まり、測量分野においても西欧諸国から技術者を招致し学びました。そして、災害などさまざまな困難などを経て取捨選択や技術開発を進め、わが国の特徴に合った測量が積み重ねられ今日に至っています。


 先人の努力に学び、絶え間ない業務の変革を組織的に継続することの重要性を再確認するのも「測量の日」であるのかもしれません。本年度は次期「基本測量に関する長期計画」策定の年でもあります。さまざまな主体から幅広くご意見を伺いたいと考えております。関係者の皆さまご協力よろしくお願いいたします。


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