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水道事業基幹管路の耐震化状況(21年度末) /大規模地震に備え早急な対策を /本県の耐震適合率はわずか3割

2023年08月22日(火)

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九州各県の基幹管路耐震化状況

 東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などにおいて、水道の重要性がクローズアップされた。だが、水道基幹管路や浄水施設、配水地の耐震化率は低く、大規模地震等に対する備えが、まだ十分とはいえないのが実態だ。ライフライン、とりわけ水は人が生きていく上で欠かせないもの。だが、本県の耐震化率は全国平均を下回る。このような現状を踏まえ、水道事業における耐震化状況に焦点を当てた。

 各地で地震や豪雨災害が頻発する中においても、水道施設の耐震化が全国的に進んでいない。厚生労働省のまとめによると、「基幹管路」と呼ばれる2021年度末における水道管の耐震適合率は全国平均41・2%で、20年度と比較し0・5ポイント上昇。年々少しずつは伸びてはいるものの、ペースは遅い。耐震管率は27・4%。1年間で0・6ポイントの伸びにとどまり、同様にこちらも低調となっている。


 これに対し、厚生労働省は、都道府県別および水道事業主体別でも進み具合に大きな開きがあると指摘している。このほか、浄水施設の耐震化率は39・2%、配水池の耐震化率は62・3%で、こちらも依然として低い状況となっている。


 このうち、浄水施設においては、着水井から浄水池までの処理系統のすべてを耐震化するには施設の停止が必要で改修が難しい場合が多いため、基幹管路や配水池に比べ耐震化が進んでいない。一方、浄水施設に比べて、配水池の耐震化が進んでいるのは、構造上、個々の配水池ごとに改修が行いやすいためだと考えられているという。


 次に、長崎県内における基幹管路の耐震化状況に焦点を当てて見る。厚生労働省のまとめによると、21年度末時点での基幹管路総延長は297万3300㍍。耐震適合性のある管の延長は96万0433㍍で、このうち65万6653㍍で耐震管が敷設されている。しかし、耐震適合率は全国平均より低い32・3%だった。1年間に1・9ポイント伸びたが、依然として低い値のままだ。さらに、耐震管率については22・1%にとどまっている。


 また、これを上水道事業別(大臣認可事業)で見た場合、長崎市は耐震適合率61・5%で、全国的に見ても比較的高い数値を示している。しかし、佐世保市(24・9%)、大村市(14・6%)、諫早市(39・2%)は依然、低い数値のままだ。


浄水施設と配水池・依然低い耐震化率


 このほか、本県における浄水施設の耐震化率も極端に低い。全国平均が39・2%であるのに対し、本県はわずか19・7%となっている。浄水施設の主要構造物では、全国で3番目に低い19・7%。昨年と同じ数値で、まったく伸びていないのが実態だ。また、配水地は全国平均62・3%に対し40・1%。1年間で2・9ポイントの伸びにとどまった。このように、いずれも全国平均を大きく下回る結果となっている。


 水道施設の耐震化が進まない理由の一つに、各自治体の財政難などが挙げられる。この状況を踏まえ県は、引き続き国庫補助活用の促進を各市町に働きかけている。簡易水道施設の統合などに伴うハード面の整備により、耐震化率が進むことに期待を寄せている。料金収入により経営している水道事業体だが、大規模地震への備えに対する意識は、まだ十分とはいえないのが実態だ。地震や豪雨災害はいつ起こるか分からない。このため、平時からライフラインの耐震化や老朽管の更新を急ぐ必要がある。


 水は、人間の生命維持のために欠くことのできないもの。水道は電気・ガス・下水道等と同様、生活や社会経済活動に欠くことのできない極めて重要なライフライン。突然の断水は計り知れない影響があるため、各水道事業者は長期的視点に立ち、水道施設の耐震化を図ることが重要だ。


〝後追い〟ではなく〝先取り〟の意識を


 近年、全国各地で地震や豪雨が頻発していることなどからも災害への備えが急務。〝後追い〟ではなく〝先取り〟の意識を持つことが必要。耐用年数を超えても更新されていない管が破裂するケースなども考えられるため、対応が急がれる。全国各地で地震が頻発している状況を鑑み、水道施設の耐震化に本腰を入れるべきだ。


=国の今後の取り組み=国は、南海トラフ地震や首都直下型地震など、発生が想定される大規模自然災害に対し強靭な国づくりに関する取り組みとして、国土強靭化基本計画および国土強靭化年次計画2022を策定。水道においては基幹管路の耐震適合率を2028年度末までに60%以上に引き上げる目標を掲げている。厚生労働省としては、水道事業者における耐震化の取り組みを支援するため、財政支援の拡充などに取り組んでいる。また、改正水道法の運用を適切に行うとともに、水道事業における耐震化がさらに進むよう、今後も引き続き取り組んでいく。
 

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