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【行政トップインタビュー】大場慎治長崎河川国道事務所長 /建設業は地域の担い手、守り手

2023年08月22日(火)

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人物

 

 今年4月、九州地方整備局長崎河川国道事務所長へ就任した大場慎治氏。道路・河川・砂防と多分野を管轄、河川では本明川ダム整備事業をも手掛ける同事務所トップは多忙を極める。「多くのことを把握しなければならない立場。生まれたばかりの子どもの起きた顔を見る機会も少ないですね」と苦笑しつつ、強いまなざしで取材に応える。

■長崎の印象―事務所長として


 福岡で生まれ育ち、大学院修了までを福岡で過ごした私にとって、長崎は身近に感じるまちです。初めて来た感じはなく、故郷に帰ってきたという感覚に近い。これから折を見て家族で県内各地に出かけたいと思います。


 この長崎において、当事務所は港湾・空港を除く県内直轄インフラの整備と管理を担っています。例えば病院搬送が早くなる、移動がしやすくなるといった暮しやすさや、観光に訪れやすくなるといった経済の活性化、安全安心の構築・確保―といったことを目的にインフラ整備を行っていますから、『地域の方々に喜んでいただけるような仕事』が基本。職員にも「地域のために汗をかいていこう」と言っています。


 道路の改築・メンテナンス、本明川の改修・管理、本明川ダムの建設事業、雲仙復興事務所から引き継いだ全国2例目となる直轄砂防管理(1例目は鹿児島桜島)と、仕事の分野が多く幅が広い。それを1カ所で行っている当事務所のトップという立場は責任も大きく、それを常に感じながら仕事に臨んでいます。そして、どの事業も「国に直轄で行ってほしい」という地域の方々の要望あってのもの。地域の要望や期待に応えるような事業展開を行っていかなければならないと思っています。


■主要事業について


 道路改築事業では「西九州自動車道松浦佐々道路」が大きな事業と言えるでしょう。本年度当初予算でも92億円を配分いただき、鋭意事業の進捗を図っています。起点側から①松浦IC~平戸IC工区②平戸IC~江迎鹿町IC工区③江迎鹿町IC~佐々IC工区の3つの工区のうち、現在①工区の工事が最も進んでいます。同工区ではトンネル2本の掘削工事を進め、残りの橋梁工事(上部工)の発注を年度内に行うことを検討中。この橋梁工事発注を終えると、工区内すべての構造物工事に着手することとなります。まさに工事の最盛期を迎えており、工事の完了に向けて尽力していきます。


 ②工区では3本のトンネルのうちの1本を年度内に発注する見通し。100㍍未満と小規模ではあるものの、これを皮切りに②工区の構造物発注も順次進めていきたいと考えています。事業全体では用地取得率約9割ですが、②③工区は用地買収が残っている箇所もあることから、ご協力いただけるよう努力しつつ、③工区の残る設計作業を進める予定です。


 県南では「森山拡幅」のうち森山東IC~森山西IC(3・3㌔㍍)区間を年度内に供用、残る区間の工事も進めていきます。「大村諫早拡幅」では早く工事着工できるよう、用地調査や用地買収、設計を進め、「富津防災」も調査を行いつつ、路線の設計作業を計画的に進めたいと思っています。


 このほかにも本明川ダムについては右岸側付替市道の工事を進め、ダム本体工事発注に向け複雑な積算作業を行っていきますし、本明川引堤事業を進めながら今後の本川の河道掘削など対策メニューを検討、雲仙では砂防施設の除石・保全工事や航空測量など、行うべき事業へしっかり取組んでいきます。また、まちづくりの面でも、その要となる長崎駅前バスターミナル再整備事業において県、市と連携し、調査の中でそれぞれが担う役割を含め協議していきたいと思っています。


■本県建設業界に向けて


 建設業界の皆さんは地域の担い手、守り手であると考えています。平時はインフラの整備を共に担っていただいており、有事には最初に現場へ入るのが建設業の皆さんです。建設業が健全でなければ、災害が起こっても復旧が始まらない。地域の守り手たる建設業が持続できるよう、発注者という立場からも「魅力ある業界」「働きやすい職場」に向けた働き方改革を行っていかなければなりません。発注者・受注者という立場はありますが非常に重要なパートナー。一体となりこれからもインフラ整備を進められるよう、業界の皆さんが仕事を継続できるよう、我々もしっかり取り組んでいきたいと思っています。


おおば・しんじ
 1984年生まれ、2008年九州大学大学院工学府建設システム工学専攻修士課程修了。同年国土交通省近畿地方整備局港湾空港部港湾空港防災・危機管理課入省後、九州地方整備局企画部企画課長、本省大臣官房技術調査課事業評価・保全企画官、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構建設企画部担当課長(経営企画部担当課長兼務)などを経て今年4月、長崎河川国道事務所長へ就任。
 

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