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【インタビュー】馬場裕子副知事 /新広域道路交通計画具現化へ高規格道路重点整備 /インフラ点検・診断・修繕に新技術を積極活用

2024年01月04日(木)

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人物

馬場副知事

 昨年7月に長崎県として初めての女性副知事となった馬場裕子氏。国土交通省出身(前職は内閣官房国土強靱化推進室参事官)として、同省所管の交通政策やインフラ整備だけでなく、企業誘致をはじめとする産業振興、文化・観光スポーツ、県民生活環境部関係など、幅広い分野を担当している。各分野にどのような思いで取り組んでいるのか話を聞いた。


企業誘致 半導体関連に注力


  • ―長崎への企業誘致が好調な状況にあるが、今後の誘致方針は

 「2018年度から22年度までの5年間で47件・3000人を超える雇用が創出されている。今年度に入っても、京セラ㈱と立地協定を締結し、諫早市に新工場が建設予定で、将来的には1000人の雇用が見込まれている。今後も、多くの雇用を生み出す製造業、特に県内企業とのサプライチェーンの構築に繋がる半導体関連は、人材育成を含め産官学連携で取り組んでいるので、力を入れていく。併せて、▽医療、航空機などの成長分野▽女性はじめ多様な働き方が期待できる事務代行を行うBPOサービスなどのオフィス系▽長崎大学情報データ科学部や県立大学情報セキュリティ学科の動きを踏まえた情報分野の企業―を重点化。さらには、企業の直接的な誘致だけでなく、将来的なサテライト設立を念頭に置いたワーケーションの推進など、さまざまな形で県の人材が生かされるよう県を挙げて取り組んでいく」


  • ―県内の社会資本整備についてどう考えているか

 「本県は、急峻な山地・崖地が多く、集中豪雨や台風の常襲地帯のため、災害のリスクと隣り合わせの状況。しかし、高規格道路の供用率は約6割に留まり、砂防関連事業の整備率が約3割と低い。県としては『国土強靱化5か年加速化対策』をしっかり活用し、5か所のトンネル工事に着手、砂防関連事業の工事箇所数を1・5倍とするなど事業を推進してきた。昨年6月に国土強靱化基本法が改正され、国土強靱化実施中期計画が法定化されるなど、5か年対策期間完了後も取組を継続する道筋が示されたので、▽当初予算の十分な確保▽5か年対策後も国土強靱化予算を別枠で確保―することなどを、市町と一体となって国に要望していく」


  • ―河川や砂防の整備は

 「気候変動の影響で、いつ大規模災害が起きてもおかしくない状況のため、ハード・ソフト一体となった防災・減災対策のさらなる推進が必要。既に、大村市の郡川水系や佐世保市の早岐川水系などでは、流域のあらゆる関係者が協働して『流域治水プロジェクト』を策定しており、今後も県下全域に取り組みを広げていきたい。この一環として、本年度末までに、すべての二級河川で浸水想定区域図を作成、事前放流による洪水調節機能も確保。土砂災害関係でも、土砂災害警戒区域等の指定や土砂災害危険度情報などをリアルタイムで発信している」


  • ―インフラの老朽化対策も大きな課題

 「まず橋梁については、全国に先駆けて07年度に長寿命化修繕計画を策定し、計画的に対策してきた。西海橋など七つの長大橋は、架け替えるとなると費用が多大なため、健全な状態のうちに長期的に安全に供用し続けられるよう、現在、官民連携の維持管理の仕組みを検討している」


 「橋梁以外の施設も、各維持管理計画を策定し、計画的な維持管理を実施中。今後は、事後保全型から予防保全型の維持管理計画への早期移行を目指し、将来的な維持管理のコスト縮減に努めていく。併せて、技術者不足に対応するため、インフラの点検・診断・修繕に、AIやドローンなど新技術を積極的に活用していく」


臨海部の魅力向上で〝みなとまち長崎〟を活性化

 

  • ―長崎市中心部では、賑わいの創出に向けた取り組みが進んでいる

 「JR長崎本線連続立体交差事業で整備中の長崎駅東通り線は、長崎駅からスタジアムシティ間の主要な歩行者動線。景観に配慮した道路として、引き続き長崎市と協力し整備を行っていく。長崎港の元船地区では、港湾施設の再編と併せた賑わいの創出に向け、『長崎元船OASIS』をコンセプトとした整備構想をPPP(官民連携)を前提に策定中。松が枝地区は、2バース化の早期の実現に向けて取り組んでいる。長崎港では、昨年3月に国際クルーズ船の受入を再開、12月までに約100隻が入港するなど、まちにも賑わいが戻ってきている。民間資金の活用も念頭に、臨海部の魅力をさらに向上させることで〝みなとまち長崎〟の活性化に繋げたい」


  • ―県全体の賑わい創出そして、地域の振興や経済の発展、安全・安心なまちづくりには道路ネットワークの整備・充実が不可欠

 「長崎に住んで、道路ネットワークの重要性を肌身に感じている。21年6月に策定した新広域道路交通計画の中で、今後20~30年後を見据え将来の発展に必要な絵姿を示しており、この計画の具現化に向け、高規格道路の整備を重点的に取り組んでいる。西九州自動車道は、松浦市側から順次、国が整備しており、用地取得が完了している松浦インターから平戸インター間では、昨年9月に松浦2号トンネルが貫通するなど、鋭意工事が進んでいる。佐々インターから佐世保大塔インター間の4車線化は、27年度の全線完成に向けネクスコ西日本が急ピッチで工事中だ」


 「島原道路の整備は、この5年で大きく進捗。20年3月に諫早インターと島原道路が直結し、22年5月には、これに繋がる長野栗面工区も開通。昨年11月には、国が整備を進めてきた森山東から森山西インター間が開通し、全体の半分超が供用した。西彼杵道路や長崎南北幹線道路などの整備も進めているが、県内の高規格道路の約4割が未開通で、まだまだ道半ばの状況。1日も早い高規格道路ネットワーク構築に向け、取り組んでいく」


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