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【こちら建設新聞法律相談所】《第1回》労働時間について教えて①「現場と事務所との移動時間は?」

2024年04月27日(土)

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 時間外労働の上限規制適用や、人手不足に伴う外国人労働者の受け入れなど、新たな対応が求められている建設業。本紙では、これらの動きについて、関係する法律面から専門家が分かりやすく解説するコラム『こちら建設新聞法律相談所』をスタートします。長崎市の弁護士法人・大同門法律事務所の協力を得て、毎月1回、様々なテーマを取り上げていきます。


労働時間について教えて①「現場と事務所との移動時間は?」


 2024年4月より、建設業にも働き方改革関連法が適用され、時間外労働の上限規制が始まりました。企業には、これまで以上に労働時間を適正に把握することが求められます。


 では、労働時間とは何でしょうか。厚生労働省のガイドラインでは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間」とされています。つまり就業規則や雇用契約書の記載にかかわらず、客観的に見て使用者の指揮命令下にあると判断されれば労働時間とみなされ、企業には賃金の支払い義務が発生します。


 そこで、建設業でよく問題となるのが現場と事務所との移動時間です。裁判所は、移動時間について、通勤時間と労働時間のどちらに当たるのかはその実態で判断するとしており、例えば、企業が事務所に立ち寄って現場に向かうよう求めている場合や移動中に打合せ等の業務を行わせている場合の移動時間は、労働時間に当たるとしています。対して、従業員が任意に車に乗り合わせて現場に移動する場合の移動時間は、指揮命令下にあるといえず、労働時間に当たらないとする判例があります。


 では、企業が指示していないのに、従業員が自主的に事務所に立ち寄り、所定労働時間外に資材の整理や道具の洗浄等の業務を行って現場に向かっている事例があるとしましょう。指示をしていないから労働時間に当たらない?いいえ。明確な指示がなくとも、これらの業務が時間外にやらざるを得ない状況にある場合や、時間外に業務が行われているのを知りながら、企業が黙認している場合には、黙示の指示に置かれていたと評価され、時間外労働の時間プラスその後の現場までの移動時間が労働時間に該当すると考えられます。


 このように労働時間の適正な把握には、企業に慎重な対応が求められます。判断に迷う場合は弁護士あるいは社会保険労務士にご相談下さい。


弁護士法人大同門法律事務所(代表:濵口純吾)

長崎市万才町6−35大樹生命長崎ビル5F/ ℡095-827-0356(平日9:00~17:30)





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