【こちら建設新聞法律相談所】《第2回》労働時間について教えて②「労働時間の適正な把握とは?」
2024年05月28日(火)
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《第2回》労働時間について教えて②「労働時間の適正な把握とは?」
建設業の残業規制が始まりましたが、働き方改革、進んでいますか?前回は、労働時間を適正に把握することの必要性と、具体例として、事務所と現場の移動時間が労働時間に当たるのかを解説いたしました。
今回は、そもそも労働時間の適正な把握って具体的にどうすればいいの?を説明いたします。
ある法律相談の一例をご紹介します。A建設会社の社長「当社の従業員は、現場に直行する場合も多いのですが、現場ごとにタイムカード機器を置けないので、労働日は、従業員がタイムカードを打刻しなくとも午前8時出勤、午後5時退勤として扱っています。もし、残業するときは、従業員から事前に申請してもらうようにしています。残業申請にOKを出したときに退勤時間を変更し、残業代を支払います。この対応に問題ありますか?」
私の回答は「社長、労働時間の把握が不十分ですよ」です。
労働安全衛生法において、事業者には客観的な記録による労働時間の把握が義務とされており、その方法として、タイムカードやパソコン使用時間のログが挙げられています。また、厚生労働省のガイドラインでは、やむを得ず自己申告制とする場合、従業員に適正な労働時間を申告するよう十分な説明をすること、自己申告と実際の労働時間が合致しているか必要に応じて実態調査を行なうこと等の措置を求めています。
A建設会社は、客観的な労働時間の記録をしておらず、適正な自己申告の方法を取っているともいえない状況でしたので、速やかに改善するようアドバイスしました。
では、A建設会社のように、現場ごとにタイムカード等の機器を設置できない場合の記録方法ですが、最近ではスマホのGPS機能を利用した勤怠管理アプリの活用がおすすめです。労働時間が一目で確認できるだけでなく、残業申請や有給休暇届等の機能が充実しているものも多いので、業務の効率化や労働時間の削減に繋がることが期待できます。ただし、勤怠管理アプリを利用しても、使い方次第で労働時間を把握しているといえない状況になることもあります。導入で満足せず、使い方についてルールを決め、従業員へよく説明をすることが重要です。