特集記事

長崎労働基準監督署 井上和秀署長インタビュー/7月1日から全国安全週間/死傷労災撲滅へ、墜落・転落防止等に重点

2024年06月29日(土)

特集記事

人物

その他

長崎労働基準監督署 井上和秀署長

2023年労働災害発生状況(休業4日以上)

建設業の死傷者数

 1カ月の準備期間を経て、本年で第97回目を迎える「全国安全週間」が、7月1日から7日までの期間で始まる。今回のスローガンは『危険に気付くあなたの目 そして摘み取る危険の芽 みんなで築く職場の安全』―。今年は第14次労働災害防止計画の2年目。「人命尊重」という崇高な基本理念のもと、いかに労働災害件数を減少させていくかが重要な課題だ。今年4月に着任、長崎労働基準監督署全体の指揮を執る井上和秀署長に、行政運営方針のほか、災害ゼロに向けて心掛けるべき点などを尋ねた。



長崎労働局の行政運営方針について教えてください。


 行政運営方針として▽幅広い業種や職種で続いている人手不足の克服▽継続的な賃上げ▽多様な働き方の実現―に最重点に取り組む。また、長崎労働基準監督署独自では、管内の労働災害の発生状況に応じた監督指導や個別指導の徹底による労働災害の防止を課題に据えている。



―長崎署管内における災害発生状況や事故の型別は。


 2023年における建設業のコロナ関連を除く休業4日以上の死傷災害は、業種別では4番目に多く、83人(全体比13%)、昨年に比べ11人増、率で15・3%増加した。事故の型別では「墜落・転落」災害が35人と全体の42%を占めており、起因物別では「はしご等」が23%、「足場」が20%となっている。


 本年5月末現在における長崎署管内の建設業の休業4日以上の死傷災害は30人(前年同時期比2人増、7・1%増)で増加している状況だ。



―災害ゼロに向け最も心掛けるべき点とは、どのようなことですか。


 脚立・はしご等の使用にあたっては、滑動防止措置の徹底や適切な使用方法による作業をお願いするとともに、脚立の使用前に、手すり付き作業台や移動式足場、または高所作業車などの作業床が確保された安全なものをリスクアセスメントの観点からも使用されるよう検討願いたい。


 また、足場については、昨年10月より足場点検関係、本年4月から一側足場の使用範囲が明確化され、足場からの墜落防止措置が強化された。併せて、木造家屋等低層住宅工事墜落防止標準マニュアルも示されたところですので、一層の墜落災害防止対策の徹底をお願いしたい。


 さらに、「墜落・転落」災害を防止するためには、手すりの設置などの墜落防止措置を講じることを基本とし、高所では墜落時保護用ヘルメットの使用、フルハーネス型墜落制止用器具の使用を徹底していただきたい。



―これから本格的な暑さとなり、熱中症が心配されますが。


 梅雨入りし、蒸し暑い季節を迎えます。


 5月31日厚生労働省発表の「令和5年職場における熱中症の発生状況(確定値)等について」によれば、2023年の熱中症による死亡災害および休業4日以上の業務上疾病者の数は1106人で、うち死亡者は31人。死亡者31人のうち建設業が12人と最も多い。建設工事現場の警備業にかかるものが4人となっていることにも注意が必要だ。


 昨年の県内の熱中症における労働災害状況は、全産業で12人。このうち建設業は1人となっている。


 7月は「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」の重点取組期間。暑さ指数に応じた対策を徹底してほしい。



―最後に、建設業に携わる方々に一言お願いします。


 2024年4月1日から時間外労働(残業)の上限規制が建設業にも適用された。


 建設業のみならずあらゆる産業で人手不足が問題だ。併せて高齢化の問題もある。


 今までは災害防止という安全面の取り組みが中心だったと思うが、若い優秀な人材確保のためにも、各企業の技術の次世代への継承を進めるためにも、労務面での労働条件の整備にも力を入れて、安全で快適、安心して働くことができる魅力ある職場づくりをお願いしたい。



■プロフィール■
井上和秀(いのうえ・かずひで)
1965年、熊本市に生まれる。1989年に労働基準監督官として旧労働省に採用。初任地は広島。その後、山口での勤務を経て、1996年から再び広島労働局管内で勤務。島根労働局浜田労働基準監督署長、松江労働基準監督署長を歴任。本年4月から現職。
 

TOP