【連載】こちら建設新聞法律相談所《第5回》ハラスメントについて教えて/「カスハラから従業員をまもろう!」
2024年08月30日(金)
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Q:請け負った建築工事を完了して建物を引き渡したのに、施主が請負代金の残金を払ってくれません。施主は、「工事内容に納得がいかないから残金は払わない。裁判でもなんでもしろ。」と言っています。しかし、今回の工事に関して見積書は作成していたのですが、契約書を作成していませんでした。裁判することはできますか?
A:裁判はできます。
①原則:口約束でもほとんどの契約は有効です。
契約書がないと契約は無効じゃないか、裁判はできないのではないか、と考える方は少なくありません。
しかし、ほとんどの契約は契約書がなく口約束だけであっても有効です。契約書は、㋐「言った、言わない」といったトラブルや誤解、誤注文などを避け、㋑お互いの権利や義務をはっきりさせるために重要ですが、契約成立の要件とまではされていません。
②例外:契約書を作成しないと無効になる契約もあります。
例外的に、法律で決められた方式に従わなければ効力が認められない契約もあります。例えば、保証契約は「書面で」(民法446条2項)、定期建物賃貸借契約は「公正証書その他の書面で」(借地借家法38条1項)、契約を締結しないと効力が生じないとされています。
これらの契約はトラブルになることが多いため、当事者が取り決めた内容を書面などで明確にしておくことが求められます。
③建設業法の書面交付義務に違反すると契約は無効?
建設業者には、建設工事の請負契約を締結するにあたり書面を作成し交付することが義務づけられているため(建設業法19条1項)、契約書を作成していないと契約が無効になるのではないかと思われる方がいます。しかし、これは誤解で契約は無効にはなりません。ただし、行政処分の対象になりますので、ご注意ください。
④まとめ
このように、ほとんどの契約は契約書がなくても有効です。
とはいえ、契約書さえ作っていればこんなに揉めることもなかったのに、というトラブルはたくさんあります。転ばぬ先の杖。契約書はきちんと作っておくことをお勧めします。