【連載】こちら建設新聞法律相談所《第6回》労働災害について教えて/「もし労働災害が起こったら?」
2024年09月27日(金)
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建設業において、労働災害は避けて通れないリスクです。事業者は、労災事故が発生した場合、所定の期日までに「労働者死傷病報告」を所轄の労働基準監督署に提出しなければなりませんが、この報告を怠ったり、虚偽の内容を記載した場合、「労災隠し」となり、重大な犯罪行為として、厳しく罰せられます。
労災隠しが行われる理由は様々ですが、主に①労働基準監督署の調査等により、処分されることを避けるため、②公共工事受注への影響を避けるため、③労災保険料の増加を避けるため、④企業の評価を守るためが挙げられます。また、労災事故に遭った労働者本人やその上司、もしくは下請業者が、自身の評価に影響することを懸念して上へ報告しないケースもあります。この場合、事業者が労災事故の発生を把握できないため、結果的に労災隠しをすることになります。
労災隠しによって影響を受けるのは事業者だけではありません。被災した労働者は、労災保険による医療費等の給付が受けられず、不要な負担を強いられる可能性があります。さらに、再発防止策が講じられないことで、同様の事故が繰り返される危険性が高まります。
このように、労災隠しは、労働者の健康と安全を脅かし、企業の信頼性を大きく損なう行為です。労災事故そのものの発生を予防することはもちろんですが、労災隠しの予防にもぜひ意識を向けてみてください。対策としては、朝礼で「労災隠しをしない」ことを確認する、労働者が労災事故を報告しやすい雰囲気を作る、労災事故が起きた場合の連絡方法を事前に決めておくなどが有効です。
補足ですが、2025年1月1日より、労働者死傷病報告の電子申請が原則義務化されます。電子申請に不慣れな事業者は、今からでも電子申請の流れを確認しておくといいですよ。